「もう大きくなったんだから、いらないでしょ!」––––子どものころ、お気に入りのものについて、こう言われたことはないでしょうか。大人からみるともういらないものでも、自分にとっては大切なもの、ということ、ありますよね。 小学校低学年からよめる童話『ジェインのもうふ』(アーサー=ミラー 作/アル=パーカー 絵/厨川圭子 訳/1971年初版)は、まさにそんな大切なもの––––毛布を手放せない女の子の、あたたかな成長物語です。 ジェインはピンクの毛布が大好き! ジェインは、やっとはいはいができるあかちゃんです。ジェインの毛布は、ピンクで、ふんわりして、あたたか。これが大好きなジェインは、朝、目がさめたらすぐにさわり、ミルクを飲むときも手放しません。 泣いていても、毛布をわたせばごきげん。お昼寝のときも、にぎったまま。夜ももちろん、毛布にくるまって眠ります。 あたたかくてふわふわの、このピンクの毛布にさわると、ジェインは安心できるのです。 少しずつ大きくなるジェイン。反対に、毛布は小さくなって…… ジェインは、だんだん大きくなっていきます。でも、まだ毛布は、ジェインにとってかけがえのない存在。毛布を「もーも」と呼び、寝るときには「あたしの もーもは どこ?」と、お母さんにねだって取ってきてもらい、一緒に眠ります。 やがて、ジェインはもっと大きくなりました。 ある朝、目をさますと、あの毛布がありません。長く使いすぎてぼろぼろになり、小さな布きれになったので、お母さんが片付けてしまったのです。 「あの もうふはね、すっかり ぼろぼろに なってしまったのよ。」 「ジェインは、もう、あかちゃんじゃ ないでしょ。あんな ちっぽけな あかちゃんもうふなんか、いらないじゃないの。」 というお母さんの言葉に、 「ぼろぼろなんかじゃ なーい。」 「あたしの もーもが ほしいのよー。」 ジェインは泣いて、毛布を取ってきてもらいました。 見れば、毛布はたしかにお母さんの言う通り、ちっぽけでした。気づかないうちにジェインは大きくなり、毛布は小さくなっていたのです。 それでも顔にくっつけてみると、今でも毛布はふわふわ。ジェインは「もーも」をにぎって、すやすや眠りました。 やがて毛布は……。あたたかな気持ちになる結末とは? もっと大きくなって、学校にも通うようになったジェイン。毛布はあまりに小さくなって、もう一緒に寝ることはできません。どう使ったらいいか、ジェインは毛布を窓辺に置いて、しばらく考えることにします。 するとそこへ、鳥が1羽やってきました。巣を作るために、毛布をついばんでいるのです! おどろき、あわてたジェインですが、お父さんはこんなふうに言いました。 「うれしくないかい? あかちゃんのときに つかった ものを、ひとに ゆずれるくらい、おおきくなったんだからね。」 鳥のあかちゃんをあたためてあげるために、毛布をゆずる。ジェインは毛布を、窓辺に置いたままにしておくことにしました。一日一日と、毛布は鳥についばまれていき、そして……。 何にもかえがたい大切なものが、ゆっくりと思い出になっていく。そんな様子をジェインの心身の成長とともに描き出す、あたたかな童話です。ご自身やお子さんと重ね合わせながら、読んでみてくださいね。 この記事に出てきた本 ジェインのもうふ