ご先祖様は、きゅうりの馬にのってやってくる
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ねこの おぼんは
みょうみょうみょう
あのよにいった ごせんぞさんを
こんや ひとばん おむかえするで
なつの まんげつ ぼんおどり
ひいひいじいさん ひひひひばあさん
はよ あいたいなあ おどりたい
ねこの おぼんは
みょうみょうみょう
広場の真ん中にやぐらを建て、ほおずき飾りをつくったり、きゅうりや茄子には足をつけたり、大忙し!
このきゅうりと茄子は精霊馬といって、お盆にはかかせないもの。ご先祖様はきゅうりの馬に乗ってこの世にやってきて、なすびの牛であの世へ帰ります。「行きは急いで、帰りはゆっくり」という意味がこめられているのです。
みんな上手にきゅうりや茄子に足をさすのに夢中ですが、おやおや、端っこの方でちょっといじけている猫がいますよ。
この子はくろべえ。さて、本当にそうでしょうか?
夕日がしずんだら、盆おどりのはじまりだ!
日が沈むと、ほおずきの明かりを頼りに、やってきたやってきた、たくさんのご先祖様たち。「おひさしぶり」「ごきげんさん」「あいたかったわ」「わたしもや」。久しぶりに会うこの世とあの世の猫たちが再会をよろこび、わいわい、楽しくおしゃべりをします。
くろべえも「おいらにも おかあちゃん いたんか〜」とうれしそう。よかったねえ。
みんなそろえば、盆おどりのはじまりです。「霊をなぐさめる」という意味をもつ盆おどり。この世のみんなもあの世のみんなも、夜が明けるまで踊りつづけます。
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ねこのおぼんは みょうみょうみょう
ねこはぎ ねこのめ ねこじゃらし
……
まるでくるったように踊る猫たちの大迫力のシーンがみどころです。
岐阜県・郡上おどりがヒントに
「死者も生者も森羅万象まじりあって盆おどりする絵本を作りたい」という思いで、はじまったこちらの絵本の企画。著者のはやしますみさんは、『ねこぼん』を制作しているとき、盆おどりの空気を感じるために、岐阜の郡上おどりを見に行ったそうです。
伝統を伝えなくてはね〜とか、ふんわり優しいものではなくて「次の世代に伝えていく」キッパリ迷いのない意思。かっこよかった。明け方までつづく踊りもすばらしかった。こどもも大人も、思春期まっただなかの男子も、一生懸命踊る。(中略)大人がビシッとかっこよく楽しそうだと、こどもはふるさとが好きになるだろうなと思った。「ねこぼん」の背骨にしたかったことがハッキリ形になって見えた。
(作者自作「ねこぼん通信」*より)
年に一度家族や親戚で集まって、ご先祖様について語り合う機会ともなるお盆。ふだんは照れくさくて聞けないような話も、聞けるかもしれません。今年は、親子でいっしょにこの絵本を開いて、お盆をむかえてみませんか?
*他にもうら話がいっぱい!「ねこぼん通信」はこちらからダウンロードできます!