偕成社はどんな本をだしているの? ときかれたら、10本の指に必ず名前があがる絵本『すてきな三にんぐみ』(トミー・アンゲラー 作/今江祥智 訳)。発売は1969年。累計部数100万部を超える、長く、たくさんの方に愛されている「どろぼう絵本」です。
黒いマントを着て、闇夜に生える白目でぐっとこちらをにらむ男たち、そして手にはまさかり。ちょっとこわい表紙ですが……でも実は、とっても「すてきな」三にんぐみのお話なのです。
黒いマントに黒ぼうし。3つの「おどし」道具。これが、どろぼう三にんぐみ!
マントに黒ぼうしのどろぼう三にんぐみ。夜になったら山からえものの馬車を探しにやってきます。ターゲットが決まれば、手順はいつものとおり。まずはこしょう・ふきつけで、馬の眼をつぶし、お次はまさかりで、馬車の車輪をに。最後にらっぱじゅうで、乗客をおどせば……たちまちみな、降参! どんな人もこの三にんぐみに出会ったら、ひとたまりもありません!
こうして三にんぐみは、馬車からうばった宝を、せっせと山にはこんで集めていました。
うばった宝の使い道は?
ある夜、このどろぼう三にんぐみが出会ったのは孤児のティファニーちゃん。ティファニーちゃんは、それよりこのおじさんたちの方がおもしろそう! と、んで山へついていきました。そこで、宝がぎっしりつまった箱をみつけ、素直にひとつの質問をします。「これ、どうするの?」
ところが、三にんぐみは宝をあつめることにばかり夢中で、その使い道は考えていなかったのです。そんなわけで、ティファニーちゃんみたいな、ひとりぼっちの子どもたちが楽しくくらせるお城を買うことに!
斬新な色づかいと、ストーリー
カラフルな絵本が多いなかで異彩をはなつ、ダークな印象の『すてきな三にんぐみ』。ページを開けば、黒、赤、青が映える斬新な色づかいで、読者を一気に「三にんぐみ」の世界へ誘います。宝をうばうけれど、使い道を考えていなかったなんて、おかしなどろぼうですね。馬車をねらうということは、もしかしてお金持ちばかりを選んでいたのでしょうか? いろいろと想像のふくらむ1冊です。
最初はこわごわ開いた絵本も、閉じるころには、表紙の三にんの顔がすっかり「すてき」にみえてくると思います!