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今週のおすすめ

とある街のそこここでおこる8つの小さな物語。高楼方子さん『街角には物語が・・・・・』

今週は、秋の読書にぴったりの読みもの『街角には物語が・・・・・』(高楼方子 作/出久根育 絵)をご紹介します。舞台はヨーロッパを思わせる、石畳の通りのある街。街角のそこここでおこる小さな物語をひろいあげた、8つの物語からなる短編集です。現実よりも少し先にあるあこがれをかなえてくれる物語で、たくさんの少女たちを魅了してきた高楼方子さんの新作です。

街角には物語が・・・・・

書きだしから物語の世界へひきこまれる!

 高楼さんの話の世界は、読者をこの先どんな素敵なことが起こるのだろうという期待で満たしてくれる不思議な力があります。新作『街角には物語が・・・・・』の書きだしはこんなふうに、はじまります。

ピッパ・フィンチは16歳。この年頃の少女らしく、世間をながめてなかなか鋭く一人前の批判などする一方で、とびきり不思議なことに出会うのをまだ本気で夢見ていた。しかも将来の希望は小説家。人々を観察してはあれこれ想像をふくらませるのが好きだった。

 これを読んだ瞬間に、読者はピッパ・フィンチという、いかにも明るく理知的な響きの名前をもつ少女を好きになってしまうのではないでしょうか。いたく現実的なところと、夢みがちなところの両面を持ちあわせた、見どころのありそうな子です!

 第1章のタイトルは、「彼女の秘密」。
 ピッパはアルバイトの子守をする合間に、いつものように窓から石畳の通りを往来する人々を眺めていました。そして、ふと目にとまったのは、特に特徴もない〈女の人〉。けれども、その〈女の人〉が、みんなが必ずつかう抜け道をとおらずに、わざわざ遠まわりの道を選んだのを見たとたんに、ピッパお得意の空想がはじまりました––––(彼女はなぜ横丁を避けたのか? その人知れぬ秘密とは!)–––。最初のお話は、ピッパの想像した「彼女の秘密」の物語です。

『街角には物語が・・・・・』見開き

自分なりの想像をくわえて読むのもおもしろい

 全部で8つの物語。それぞれが、この街でくらす別の人物を主人公にしたお話ではありますが、ときたま章をこえて、共通して出てくるモチーフもあります。どこからが空想でどこからが真実なのか……自分なりの解釈をくわえて読むのが楽しい作品。それぞれのお話にそえられた、出久根育さんの描く鉛筆画もぴたりとあっていて、絵のページにたどりつくたびに自分のイメージとくらべながらも、うれしい気持ちになる1冊です。

 中学生以上から楽しんでいただけます。ぜひこの秋の読書にいかがですか?

『街角には物語が・・・・・』見開き

4つ目のお話、「ウソ太郎」の挿絵。すぐにウソをつくロビンぼうや。母親からそのことを相談されたロビンの伯父さんは、ぼうやにこのちょっとぶきみなタンスをあげました。いったいどんなしかけが?

この記事に出てきた本

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今日の1さつ

2年前から一人暮らしです。書店で本を目にして、トガリネズミの愛らしいすがたに、つい買ってしまいました。主人公がとてもかわいくて、1ページ、1ページ色んなことを想像して、楽しくて、最後読み終わったとき、「そっか〜良かったね」と声が出てしまいました。ほんわかとやさしい気持ちになり幸せでした。(60代)

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