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子育てと絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第25回

子どもが平気でうそをつくので心配です。「うそはダメ」という絵本ってありますか?

2023.03.25

「うそをつくのは、だめ」ということ伝えるお話といえば、イソップの「オオカミ少年」が有名ですね。でも、絵本の中には、「うそ」を平気でつく子どもがたくさん登場します。わたしは、世界中の子どもがうそをつくんだなあと、絵本を見ながら感心してしまいます。

「うそ」とすぐにわかるうそは、深刻にならなくて大丈夫。

「うそ」とすぐにわかることが多いのが、子どものうその特徴ですね。

「なんで、うそをつくの?!」と言いたくなってしまうこともある。でも、「そうなんだあ」と、だまされたふりをして反応を見てみるというのもありだし、「あー! うそついたなあ!」と笑ってしまうというのもいいかもしれません。

小さい子のつく「うそ」は、たいてい見え見えでかわいいものが多いなあと思います。

おとなたちのうそは、人をだます悪意のあるものが多いかもしれない。でも、子どもがつくうそは、決してそういう悪意のあるものではない気がします。

食べたのに「食べてない」とか、「だれがやったの?」ときいても「ぼくじゃない」とか。「あなたしかいないでしょ!」という、見えすぎのうそは深刻にならなくても大丈夫だと思います。子どもたちにとっては、お父さんやお母さんに怒られたくない気持ちでついたうそなのに、「なんで、うそをつくの!」ともっと怒られてしまうこともあるかもしれません。でも、こんなやりとりも、子どもの成長の一過程です。

「うそをつくと、えんまさまに舌をぬかれるよ!」と、子どもの頃のわたしは、よく親に言われていました。きっと、よくうそをつく子どもだったのでしょう。「えんまさまはこわい」という記憶も残っています。

子どもはやってもいないことを「○○やった」と平然と語ることもある。

子どもたちのなかでは、こんなやりとりがあることも。

「きのう、どうぶつえんにいったんだ」

「おれも、どうぶつえんいった」

「わたし、ひこうきでいった」

「おまえ、ひこうきでいったの? すごいじゃん」

「おれは……」(と、会話が続いていく)

このやりとりを見て、あとでお母さんにきいたら「飛行機なんて乗ったことありません」と言われました。こういうとき、家族で動物園へ行ったことを思い出している子もいれば、言葉だけをまねしている子もいるようです。思いはひとりひとりちがうのに、会話が成り立つのがすごい。


子どもはこうして、やってもいないことを「〇〇をやった」と平然と語っておとなを驚かせることがよくあります。そんなときは、「うそを言わないの!」と言わずに、一緒にその世界を楽しんでみるのがおすすめです。

絵本や物語の世界は「うそ」のかたまり。ぞうやライオンが服を着て2本足で歩いていても「うそつき!」なんて言う子どもはいなくて、ちゃんと想像の世界を楽しんでいます。もうすぐエイプリルフールなので、ユーモアたっぷりのうそを考えると楽しいかも!

おすすめ! 絵本で楽しめる「うそ」の世界。


『えんまのはいしゃ』(くすのきしげのり・作、二見正直・絵、偕成社)
「天下一の はいしゃ」と患者をだましてきた歯医者が、えんまさまの前につれてこられ、じぶんの舌をぬかれるどころか、えんまさまの歯をぬいてしまうというお話。歯医者のうそにだまされて、痛いのをがまんする鬼たちがユーモラスに描かれている。鬼やえんまさまのようすが、子どもたちにはちょっとこわいかも!


『まあちゃんのながいかみ』(たかどのほうこ・作、福音館書店)
髪の長いはあちゃんとみいちゃんが、おかっぱあたまのまあちゃんに、「せなかが かくれるくらい かみをのばすの」と言う。すると、まあちゃんが「なーんだ、あんたたち たったのそれしかのばさないの? あたしなんかね」と言って、じぶんがどれだけ髪をのばすかという話を語り出す。まあちゃんの話は、「うそ」とは少しちがうかもしれない。でも、子どもが「うそ」をつくとき、まあちゃんのように想像していることもあるのだと思う。この本を読み終わったとたん、おかっぱあたまの3歳のみなちゃんが鏡の前へ行き、じぶんの顔をじっと見ていたことを思い出します。


『リゼッテうそをつきにいく』(カタリーナ・ヴァルクス・作、ふしみみさを・訳、クレヨンハウス)

すごいうそをつきにいこうと、でかけるリゼッテとボビ。ゾウのポポフにバカンスに行くのと、うそをつきます。でも、うそが本当になって楽しい1日を過ごす。だまされているゾウのポポフの表情が変わるのを、子どもたちは見逃さない。ちょっとかわいそうだと思うのか、真剣な顔になったり、「この子も楽しそうだね」と言ったり。最後にママが登場するのもいい!

 


安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。

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