icon_twitter_01 icon_facebook_01 icon_youtube_01 icon_hatena_01 icon_line_01 icon_pocket_01 icon_arrow_01_r icon-close_01

子育てと絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第26回

通いはじめた園で子どもが毎朝大泣き。親はどんな心持ちでいたらいいでしょう?

2023.04.25

4月に開園した新しい保育園で園長として働くことになりました。全員が新入園、保護者の方も職員もみんな、「はじめまして」でスタートです。新しくできた園なので、幼児は少なく、0歳から2歳までの乳児20人が生活をはじめました。

子どもを保育園に預けたばかりのころは、ドキドキしますね。

春の保育園のようすがどんなかというと、園での生活がはじまると、まず、子どもたちはお母さんやお父さんの姿が見えなくなると泣きます。

それはもう、この世の終わりくらいの泣き方で!

数日間、キョトンとした顔で過ごしていた1歳の子も、だんだんわかってきて泣きます。

保育園の玄関の前で、お気に入りの人形を抱いて外をながめている子どもの姿に、保育者であるわたしたちも切なくなることがあります。


お父さんもお母さんも、仕事に行くのに後ろ髪をひかれる思いで「いってきます」とでかけていきます。

子どもを預けて申し訳ないと思うより、自分の存在を大事に思ってくれることに感謝して、仕事に行けたらいいな。

それにしても、子どもたちにとって、お母さんやお父さんの存在は、やっぱりこんなにも大きいのだなあとあらためて感じる日々です。

「ぼくは、おかあさんがそばにいなくちゃだめなんだ!」と全身で訴える姿に、保育者はただ寄り添うことしかできません。

平気で遊んでいた子も、夕方になって玄関におうちの方の姿が見えるなり「どこ行ってたの?!」と言わんばかりに泣き出すことがあります。

そんな子どもたちの姿を見て思うのだけれど、この経験はきっと、小さい子どもたちが「家族」という存在に気づく大事なことなのではないかということ。

お母さんやお父さんがいつもそばにいてくれたんだね、とその存在を何よりも大事に感じて泣いているのだろう、と思う。


だからお父さんやお母さんは、保育園に預けて子どもに申し訳ないと思わずに、自分の存在を大事に思ってくれる子どもに感謝して、仕事に行ってくれたらいいなあと思います。

「だいすき」や「ありがとう」をテーマにした絵本を紹介!

今回は子どもとおうちの方とが互いを思い合う気持ちから、「だいすき」や「ありがとう」をテーマにした絵本を紹介します。忙しいしドキドキする春に、ほっとするような絵本を家族で見てみてくださいね。


『あなたがだいすき』(鈴木まもる・作、ポプラ社)
子どもにとって、お父さんお母さんが、そばにいてくれる大好きな存在であることにはまちがいないと思います。でも、おとなのほうは、忙しかったり、心身ともに余裕がなかったりすると、「そこに子どもがいるだけで、とってもうれしい」と感じられないこともありますね。「なんでこんなにイライラするのだろう?」と思うことも。この絵本には、「わたしは あなたが だいすきです」という、子どもを包みこむ言葉がすべてのページに書かれています。新しい生活がはじまるときに家族で読みたい絵本です。


『こぐまちゃん ありがとう』(わかやまけん・作、もりひさし・作、わだよしおみ・作、こぐま社)
絵本のなかで、こぐまちゃんが迷子になってしまいます。しろくまのおじさんがこぐまちゃんをおんぶして、おうちまでつれてきてくれます。そのときの気持ちを、こぐまちゃんが「ありがとう」とおじさんに伝えます。「ありがとう」って、すっと言えるようになるには、日々の生活の中で「ありがとう」とおとなが子どもに伝えていくことも大切だと思います。子どもたちはお手伝いをするのが好きなので、「このゴミ、すててくれる?」とか「◯◯をとって」とか、子どもに手伝ってもらわなくてもいいことをお願いしてみるのもおすすめです。おとなのほうも「ありがとう」って言うだけで、心が落ち着くことがあります。


『ありがとうのえほん』(フランソワーズ・セニョーボ・作、なかがわちひろ・訳、偕成社)
ピンクの表紙がかわいい、わたしが大好きな絵本の1冊です。1947年に書かれた絵本なのだけれど、優しい色づかいにほっとする。誰かに「ありがとう」を言うのではなく、自分のまわりのものに「ありがとう」を言う。「ありがとう」とだけ言いながらこの本のページをめくる子どもたちを見ると、わたし自身も優しい気持ちになれます。


安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。

この記事に出てきた本

バックナンバー

今日の1さつ

2024.12.13

こちらから与えてしまいがちな子育てですが、そんなことはしなくても、周りの人・自然・毎日の生活こそが、子供にとって大切なんだと思いました。物語の中でこわがっている子供のアライグマに「行かなくていいよ」とは言わず、一緒についていこうともしないお母さんはえらいなと思いました。(読者の方より)

new!新しい記事を読む