icon_twitter_01 icon_facebook_01 icon_youtube_01 icon_hatena_01 icon_line_01 icon_pocket_01 icon_arrow_01_r

作家が語る「わたしの新刊」

パンダのぬいぐるみと雪だるまのちょっとかわった友情絵本『うちにパンダがいるよ』

『うちにパンダがいるよ』(高畠 純 絵)は、中国出身のとうめいさんの絵本。唐さんは、新聞記者、日本の歌の訳詞を経験された後、福音館書店の礎を築いた松居直さんに見初められ、来日。長年編集者として活躍されてきた方です。パンダのぬいぐるみのパンパンと雪だるま、そして、パンパンの持ち主のかなちゃんの、ユーモラスな交流を描いたこの絵本について、お話しを伺いました。

中国語タイトルは「ウォ ジャ ユウ シオン マオ」と読みます!

お話し作りはどのようにされましたか?

子どもの本の仕事に長くたずさわっていると、ふつう以上に子どもを観察するようになるのかもしれません。自分の子ども、また孫もその対象です。

そうしたなかで、気になることがあります。おとなの目には「物」でも、子どもはその「物」に命があり、たましいがあるように感じていることです。たとえば、お人形やおもちゃに話しかけたり、いっしょに遊んだりします。これは子どもの特徴で、ファンタジーもそこからうまれると思います。

また、ぼく自身もパンダが好きで、生息地の四川省の山奥へパンダを見にいったこともあります。

3年前にモンゴルで発掘された恐竜の化石をみて、『うちにきょうりゅうがいるよ』という絵本をつくりました。中国で出版され、人気がありました。この『うちにパンダがいるよ』はその第2弾です。偕成社の良い編集者にめぐりあい、温かく励まされて完成したのです。

お気に入りのシーンはどこですか?

高畠さんの絵はすばらしいです。どのシーンもうまく描かれています。いちばん好きなシーンはパンパンが窓から雪だるまを招きいれるシーンです。また、孫に読んであげたとき、パンパンが雪だるまの上にのっかって、どさっと転がり落ちるところでよく笑っていました。

ほんとうに、高畠さんの絵がお話の雰囲気にぴったりですね。高畠さんへ絵を依頼することになった理由や経緯があれば教えてください。

高畠さんとは長いおつきあいです。『どうするどうするあなのなか』(2008年/福音館書店)、『もうちょっともうちょっと』(2018年/福音館書店)という絵本も編集させていただきました。また、ぼくの著書『さくらの気持ち パンダの苦悩』(2010年/岩波書店)にもパンダの表紙を描いてくださいました。高畠さんが描くパンダはユーモアがあって、生き生きしていて、表情豊かで、大好きです。この文を書いたとき、絵は彼しかないと思いました。

高畠さんのイラストで、かなちゃんとパンパンが同じベッドで寝ているのが、パンパンがかなちゃんにとって特別な存在だということが感じられて好きなところでした。

かなちゃんとパンパンが同じベッドで寝ているのは高畠さんの創作です。ぼくの文にはありませんし、そこまで考えていなかったです。画家の方が多くのアイデアを考えて作品を豊かにしてくれます。ベッドで寝ているかなちゃんの寝顔、パンパンの表情はとてもおもしろいです。

唐さんは中国のご出身ですが、中国の子どもたちにとって、パンダはどのような存在ですか?

中国の子どもたちにもパンダは人気者です。パンダの頭と体の比率、かわいいしぐさなど、子どもに通じるところがあります。パンダに親しみを感じるのは、どの国の子どもも変わらないと思います

唐さんご自身も、雪だるまをつくるなど、子どもの頃に雪あそびをした思い出がありますか。

ぼくは北京で生まれ育ちました。子どもの頃、冬になると雪がよく降りました。いまは地球温暖化で雪が少なくなったようです。雪合戦をしたり、雪だるまをつくったりと、楽しい思い出がたくさんあります。また、若い頃、北方の黒竜江省に2年間生活しました。冬は零下40度になることもあり、雪は身近でした。文中の「あっ、あたまにぶつかった。いたいよ」「つめたい!くびにはいっちゃった」などのセリフは、実体験です。もともと「くつしたがぬれたよ」とかもありましたが、長いのでけずりました。作品には、人生経験がなんらかの形で反映されるのだろうと思います。

最後に、読者の方へのメッセージをお願いいたします。

今回、偕成社からこの作品を日本の子どもたちにお届けすることができて光栄です。中国で生まれ育ち、日本で家庭を築き、子どもを育てましたが、いつの間にか、日本での生活が中国より長くなりました。

日本と中国の人々が仲良くして、学び合い、ともに平和で幸せに暮らすのがぼくの切なる願いです。絵本を通して、その願いを少しでも叶えられたらそれより嬉しいことはありません。

ありがとうございました!


唐 亜明(とう・あめい)
1953年、中国北京市生まれ。新聞記者などを経て1983年に来日。早稲田大学卒業、東京大学大学院総合文化研究科修了。福音館書店の編集者として定年まで多くの絵本を手がけた。おもな著書に『さくらの気持ち パンダの苦悩』(岩波書店)、『翡翠露』(TBSブリタニカ/開高健賞奨励賞)、絵本に『ナージャとりゅうおう』(講談社/講談社出版文化賞絵本賞)、「西遊記(全3巻)」(偕成社)などがある。現在は中国の児童書の出版社の編集長を務めている。

この記事に出てきた本

関連記事

バックナンバー

今日の1さつ

山本容子先生の絵が大好きでいろいろ集めています。ストーリーがまた愉快で壮大でワクワクします。どこからこんな楽しいお話が出てくるのでしょうね。絵がすばらしいのはもちろんです。花も動物も一人一人がちがう表情をしていて、見飽きません。すばらしい絵本をありがとうございます。(80代)

pickup

new!新しい記事を読む