「ふつう」にとらわれずに、さまざまな驚きの視点を届けてくれる五味太郎さんの絵本。『まだまだ まだまだ』は、ちょっとはずれてしまう、いきすぎてしまう子どもたちをユーモアまじえて、明るくやさしくつつみこむ作品です。
ぼくのかけっこはまだまだおわらない!
『まだまだ まだまだ』は5人の子どもたちのかけっこからはじまります!
よーいどん! とスタートし、次のページをめくると……あら、あっという間にゴールに到着してしまいました! もう終わってしまうの? いえいえ、ここからがこの絵本の本当のはじまりです。
なんと、びりっけつだった最後のひとりの子が、ゴールをこえて、まだまだ走っていってしまいました。
ぼくは まだまだ おわりません!
そのまま、にぎやかなところや、ビルのあいだ、畑や森の中を、男の子はたったひとりでかけっこしていきます。
さてさて、この子はどこまで走っていくのでしょうか。
一心に前へ前へ走る男の子に加えて、まわりにいる人や動物たちの表情にも注目したい1冊。最後にあっとおもしろい結末が待っていますよ。
常識をうたがってみた先にある、おもしろさ
かけっこはスタートとゴールがあって、定められたコースをいかに速く走り切るか、という競技。ルールあってこそ競って楽しいものですが、なんとこの男の子はゴールも、規程の道もはずれて自分だけのかけっこをはじめてしまいます。
「え、そんなのあり!?」と最初はびっくりしつつも、そのすがすがしさといったら! たとえそれでビリになっても、いや、これはこれでよいかけっこだ、むしろかけっこというのは、順位も大事だけど、純粋に走るのを楽しむためにあるものかもなあ、という気持ちになってきます。
普通の常識を疑ってみること、逸脱しても楽しく明るくやること。上手に生きよう、正しくやろうということばかりが優先されて、いつの間にかこちこちに固まってしまっている私たちの頭を、スコーンとたたいてくれる、爽快な絵本です。