人間と仲良くなりたい赤おにと、それを後押しする友人の青おにの、あたたかくも切ない物語、「泣いた赤おに」。浜田廣介さんのこの名作を、今回ご紹介する絵本『ないた あかおに』です。絵は、2020年11月に亡くなられた、池田龍雄さんが手がけています。
赤おにと青おにの、感動的な友情物語
赤おには、山に住む元気で心やさしいおに。自分はおにに生まれたけれど、村の人間たちともなかよくしたい、と考えますが、なかなかうまくいきません。
その悩みをきいたのが、赤おにの友だち、青おにでした。赤おにの願いを叶えたいと思った青おには、自分が悪いおにのふりをして暴れまわると宣言します。赤おにがそれを止めれば、村の人は赤おにをいいおにだと認めてくれるだろう、というのです。
「それじゃ、きみに わるいよ。すまないよ。」
という赤おにに、
「なにを いう。ともだちの なかでは ないか。」
と、青おには計画をさっそく実行します。
計画は成功し、村の人たちは赤おにをいいおにだといって、赤おにと仲良く交流するようになりました。
楽しい毎日を過ごすうち、赤おには、青おにとしばらく会っていないことを思い出します。そして青おにの家をたずねるのですが、そこにはもう青おにはおらず、赤おにへの手紙が残されていました。
きみと ぼくと、いったり きたり して いては、
にんげんたちは、きに なって、おちつかないかも しれません。
そう かんがえて、たびに でる ことに しました。
ながい たび、とおい たび、けれども、ぼくは、どこに いようと、きみを おもって いるでしょう。
きみの だいじな しあわせを いつも いのって いるでしょう。
さようなら、きみ、からだを だいじに してください。
どこまでも きみの ともだち あおおに
青おにの心に胸をうたれた赤おには、何度もその手紙を読み返し、涙を流したのでした。
1965年初版! やさしい言葉と絵で描かれ、長く愛される絵本版
浜田廣介さんによる童話「泣いた赤おに」は、1933年、浜田さんが40歳のときに書かれました。その後、読者からたくさんの反響を寄せられ、やさしい言葉で書きなおされたのが、この絵本『ないた あかおに』です。絵を手がけたのは、2020年11月に亡くなられた、画家の池田龍雄さん。やさしい赤おにと青おにの姿を、柔らかな色合いで描いています。
今作は1965年の刊行以来、実に55年以上読みつがれ、現在は累計50万部を突破しています。言葉づかいや、人間たちの暮らしこそ、昔ばなしのような風合いがありますが、その内容は色あせることがありません。友だちを想う青おにの心は、赤おにだけでなく、読者である私たちの中にも残っているのです。
もうすぐ節分です。「おにの絵本」と聞いて、このお話が浮かぶ方も多いはず。「おにはーそと!」と、悪いおには追い払いたいですが、こんなやさしいおにがいることも、忘れずにいたいですね。