読書の秋、いろんな作家の小説みるのはいかがでしょうか? 「物語は4つの顔をもつ」は、人気作家24人の短い小説をテーマ別に6編ずつに分けた、4冊からなるシリーズです。「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズの廣嶋玲子さん、『ある晴れた夏の朝』の小手鞠るいさんなどが参加しています。
物語の「4つの顔」とは?
このシリーズは、物語を内容ごとに大きく4つの種類=顔に分類して、4冊にまとめてあります。その「4つの顔」をご紹介します。
1 物語の形勢が変わる、『やがて、物語は逆転する』
嘘をついたり人をおとしめたりするいやな子に、仕返しを果たしたり(藤 真知子「ムカつくあの子」)、五十音順で並ぶといつも最後になり、苦い思いをしてきた「山口」「和田」「吉岡」「湯沢」の4人が、同盟を組んで結束したり(吉野万理子「やゆよわ同盟」)。物語の最後で形勢ががらっと変わる、すっきりできる6編が入っています。
<収録作品>
「ムカつくあの子」(藤 真知子)
「協力者B」(戸森しるこ)
「VNCの大スクープ!」(野村一秋)
「くるっと一回転」(濱野京子)
「やゆよわ同盟」(吉野万理子)
2 心地よく物語の余韻にひたれる、『そして、物語は決着する』
「ああ、よかった!」「おさまるところに、おさまった!」というような、気持ちの良い終わり方の6編が入っています。「冬仙人」の力で家の冷凍庫に入ってしまった颯太(廣嶋玲子「冷凍庫をあけてはいけません」)、チハルが見てしまった、大怪我をした野生の鹿(小手鞠るい「宇宙人の自由研究」)……。どうなるの!? とはらはらしますが、最後は安心のラストを迎え、ほっとさせてくれます。
<収録作品>
「冷凍庫をあけてはいけません」(廣嶋玲子)
「F子のうわさ」(赤羽じゅんこ)
「七不思議迷路の冒険」(山本悦子)
「笛の音がきこえる」(森島いずみ)
「わたしには向かない職業」(田部智子)
3 人と人とのふれあいをやさしく描く、『きっと、物語はよりそう』
記憶のあいまいになったおばあちゃんが、幼い頃の孫との思い出だけはずっと覚えていてくれてじんとしたり(服部千春「ぬくぬくの百円玉」)、とある出来事によって、疎ましく思っていた幼なじみがいるうれしさを噛みしめたり(工藤純子「バーチャルな初恋」)、心に染みいるような6編が入っています。
<収録作品>
「関根って苦手」(次郎丸 忍)
「ぬくぬくの百円玉」(服部千春)
「バーチャルな初恋」(工藤純子)
「シッポ友だち」(吉田桃子)
「瀬尾くんと歩く」(中山聖子)
4 思わぬ方向にストーリーが進む、『さらに、物語は迷いこむ』
読んでいるあいだにも、「このあとどう展開するの?」と引き込まれる物語が6編入っています。学校でときどき見かけ、少し話したこともある女の子。クラスを知りたいと後をつけると、知らない部屋に入っていき……(藤重ヒカル「この教室を見つけた君へ」)。マンションの中で、自分の部屋だけが消えてしまった! 管理会社に電話をすると、担当者の答えは想像を絶するものだった……(村上しいこ「カギはもってる」)。読み終わったあと、もう一度ページを戻って確かめたくなるかもしれません。
<収録作品>
「カギはもってる」(村上しいこ)
「この教室を見つけた君へ」(藤重ヒカル)
「富士野町のケンちゃん」(今井恭子)
「静かな救急車」(後藤みわこ)
「終わりの来ない終わり」(朝比奈あすか)
「怪盗こころどろぼう」(内田麟太郎)
絵:浅賀行雄
どれから読んでもおもしろい! 朝読など、短い時間の読書にも。
24編はどれも、それほど長くなく、読みやすい物語ばかりです。朝の短い時間で読書をする「朝読」にもぴったり! さまざまな物語があるので、お気に入りの1編を見つけてみてください。気に入ったら、その作者の別の本にチャレンジしてみるのも楽しいですよ。
もちろんどの巻から読んでも大丈夫です。この秋の読書に、ぜひ気になった1冊をひらいてみてくださいね。