少しずつ、春の足音が聞こえてくる3月。桜のつぼみもふくらむ頃ですね。
きょうご紹介する『はじめまして』(近藤薫美子 作)は、春、一輪の花を咲かせるところからはじまる、桜の木の1年間を描いた絵本です。春夏秋冬、どの季節のどの1日も、「はじめまして」に満ちています。
春、花が咲き、ミツバチがやってきた
はじまりは、春。桜の花が咲き、「はじめまして」とミツバチがやってきました。花のみつをもらいにきたのです。
つづいて、シジュウカラの子が「はじめまして」。そしてあちこちで、いろんな虫たちが、「はじめまして!」と木にやってきます。
同じ木に咲くどのも、ちがうそれぞれの花と生きものの間で、あいさつが交わされます。
やがて、桜の季節が終わり、花と風が「はじめまして」と出会い、花は散っていきます。
夏に近づき、葉っぱが芽を出したときも、実がなったときも、葉っぱが落ちたときも、虫たちや、おひさまや、大地と出会う桜のまわりには、「はじめまして」が満ちています。
そして、雪がひとひら、「はじめまして」と、冬芽の上におちてきました。雪はつぎつぎと降ってきます。
いくせん いくまん いくおくの はじめまして。
真っ白に覆われる、桜の木。でも、その下では、新たな「はじめまして」が眠っていて……。
「ようちえん絵本大賞」受賞! じっくり眺めたい絵も魅力
を、豊かに、たからかに描いたこの絵本は、第11回ようちえん絵本大賞の特別賞にも選ばれました。
また、虫をはじめとした、自然の中の生きものを描くのが得意の近藤薫美子さんならではの、細部まで楽しい絵も見事です。よーく見ると、あちらこちらで虫たちが会話を楽しんでいるんですよ。
クモの巣にゴミを持ってきている虫も!
あたたかくユーモアもある、春、そしてその先の季節も楽しみになる一冊です。入園・入学、新しい生活などの「はじめまして」の前に、ぜひ手にとってみてください。