文字だけを追うと、めんどりロージーののんびりとしたさんぽの道中を描く絵本。ところが絵をみると、実はロージーにはとんでもない危険が迫っていたのです!
きょうは、絵がさまざまなことを語るユニークなロングセラー絵本『ロージーのおさんぽ』(パット=ハッチンス 作/渡辺茂男 訳/初版1975年)をご紹介します。たくさんの作品を手がけるイギリスの絵本作家、ハッチンスのです。
おさんぽにでかける、めんどりのロージー。その背後には…
とある牧場のとりごやから、めんどりのロージーがおさんぽにでかけました。
でも、その後ろには……
なんと、きつねがいて、ロージーをねらっています! 舌なめずりをするきつね。ロージーをつかまえて食べるつもりなのでしょうか? 気をつけて、ロージー!
でもロージーは、きつねの存在にちっとも気づきません。ただただ平和に、すたこら歩いていきます。その後ろには、今にもとびかかりそうなきつね! たいへんです!
と、思いきや、きつねの顔に鋤がごちん!
前のページをみると、たしかに鋤が落ちています。ロージーは気づかないうちに、九死に一生を得たのです!
このあともロージーは、池のまわりをあるいたり、干し草の山をこえたりと、すたすたおさんぽを続けます。その後ろをきつねはずっと追いかけ、ロージーは常に危険な状態……なのですが、当の本人はまったく気づかず、一方の次々と災難がふりかかるのです。
絵が語るユニークなつくり! じっくり見て楽しもう
全体の文字は少ないものの、絵の中に物語がある、まさに「絵が語る絵本」。読者はそのドラマの一部始終をみているのに、主人公であるロージーはちっとも気がつかない、というのもユニークなところです。
作者のパット=ハッチンスは多くの絵本を手がけていますが、この『ロージーのおさんぽ』がデビュー作です。のどかで愛らしいロージーのいる農場は、イギリスの田園地帯出身という彼女ならではの舞台かもしれません。
この絵の中に、ロージーがおさんぽで通る池や小屋が描かれています。
また、2019年7月には、続編である『ロージーのひよこはどこ?』が好学社から刊行されました。合わせて読んでみるのもいいですね。
ロージーのひよこはどこ? パット・ハッチンス 作/こみや ゆう 訳 好学社