メールやSNSなど、あらゆる場面で使う、言葉や文章。どうやって書いたらいいか、迷うことはありませんか?
今回ご紹介する『放課後の文章教室』は、幅広い分野で活躍する作家の小手鞠るいさんが、若い読者からの文章に関する質問や悩みに答える、YAのための文章読本。投稿ひとつひとつに答えながら、「ものの見方・考え方」についても教えてくれます。
この本は、大きく5つの章に分かれています。「友情を書く」「気持ちを書く」「意見を書く」「体験を書く」「自分を書く」。それぞれの章では、若い読者の方々からの投稿に、小手鞠さんが親身になって答えています。
たとえば第一章「友情を書く」には、こんな質問が出てきます。
「ツイッターを使って、友だちを増やしたいと思っています。どうすれば、人の目に留まって、大勢の人に読んでもらえるような、魅力的な文章(140文字)が書けるのか、教えてください。」
「友だちから届いたメールに、心がひどく傷つくことがあります。でも、それにどう対抗したらいいのか、わかりません。メールを書くときに気をつけた方がいいことって、ありますか?」
一言では答えられない、むずかしい質問です。小手鞠さんはこうした質問に、言葉をつくして答えていきます。
たとえば1つ目の質問には、「『魅力的な文章』というのは、内容が魅力的であるということ。大勢の人に読んでもらうには、どんな人にでもわかるように書くことが大切」といった、再確認すべき話からはじまり、「“友だち”を増やしたいのであれば、どんな友だちがほしいのかを想定し、ツイートをその友だちに会いに行く日のファッションととらえて書いてみては?」など、具体的なヒントまで提示してくれます。質問者の使った言葉にもひとつひとつ注目し、その気持ちを推し量りながら回答しています。
ときには質問の中の言葉を取り上げて、「そもそもこの言葉は、どういう意図で書いたのでしょう?」と、あえて挑戦的に投げかけることも。これは、小手鞠さん自身が「言葉」というものを真摯にとらえているからこその投げかけです。
このように全編を通じて、小手鞠さんの「言葉」「文章」に対する思いが感じられます。
ほかの人が書いた文章も多数登場。「引用」で伝える言葉の力
本の中で小手鞠さんは、ほかの人の言葉を数多く引用しています。自分ではない人の言葉を紹介することで、より多角的に質問に答えているのです。
同じ文章でも、実際のものと引用されたものでは、読んだときの伝わり方が変わってきます。小手鞠さんの解説のついたほかの作品からの引用文を読むと、その文章にまた別のかがやきを発見することができます。
また、小手鞠さんは、さまざまな分野から引用を行っています。作家だけでなく、漫画家や女優の言葉。今の時代の人の言葉から、明治時代の人の言葉まで。書くことと同時に、本を読むことも大好きという小手鞠さんの引き出しが多いことがわかります。
たくさんの引用文を読む中で、「これ、いい言葉だな」「この文章、先が気になるから、本を読んでみたいな」と、また別の方向に興味がわく方もいるかもしれません。まさに、言葉、文章の力ですね。
宿題のヒントにもなるかも? 手元に置いて、迷ったときにひらきたい一冊
小手鞠さんは全体を通して、質問や悩みに対して「こうしたら万事解決!」という明確な答えを出しているわけではありません。でも、いろいろな視点から「書くこと」を丁寧にとらえているその回答を読んでみると、ふしぎと解決策がみえてきて、やがてそれがくっきりと浮かび上がってきます。
悩みというほどの大げさなことでなくても、文章ってむずかしいなあ、感想文を書くのは気が重いなあ…と感じたときにこの本をひらくと、小手鞠さんがその気持ちに答えてくれそうです。夏休み中の方には、宿題のヒントもかくれているかもしれません! ぜひ手にとってみてくださいね。
★この本は、Kaisei webの連載を書籍化したものです。こちらで一部を公開しています!