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絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第17回

「社会で子どもを育てる」という言葉が、実感できない! 具体的にどういうこと?!

 いまの時代、少子化、核家族化、都市化等々、地域のつながりが希薄になっていく状況はどんどん進んでいると言われています。住んでいる地域によって違いますが、あきらかに子育てをするのは大変だと思う状況になっていると言ってまちがいないようです。

 わたしが暮らす地域でも、温暖化によって夏は外では遊べない暑さになるし、小さい子たちにとっては紫外線もダメージになる。子どもたちが遊ぶ環境の変化に加えて、新型コロナの影響で、子育てはますます孤立化しているのではないかと思います。

どうしたら、お父さんやお母さんに助けが届くのか?が、問題

 「社会で子どもを育てる」どころか、親が孤立感に悩まされていたら、まずは地域にある子どものための施設へ行ってみるのはどうでしょう。子育て支援の制度や施設は整ってきていますが、どうしたら、お父さんやお母さんたちにそれが届くのか、わたしが参加する自治体の会議でも、何度も考えてきました。

 児童センターの親子サークルの時間や、保育園を開放する「園開放」の日には、こんな質問をよく受けていました。「ごはんを食べないけど、大丈夫でしょうか?」「トイレトレーニングは、どうしたらいいでしょうか?」などなど。こういう質問を受けたときには、わたしがあたりまえのことを言って安心してもらうのではなく、そばにいるほかのお母さんに「どうしていますか?」ときいて、親同士会話ができる場をつくってきました。ほかにも、複数の家族が一緒に楽しめるふれあい遊びをすることもありました。

 でも、児童センターや保育園まででてきてくれないと、何もできないというのが課題です。

 子育てが辛かったり、自分はダメだと自信をなくしたりしている人が、人が大勢いるところにでていくのはハードルが高い。「子育て支援」は、「子ども支援」ではないので、子どものために行くのではなく、じぶん(親)のためになにかやってくれるらしいから行ってみようかとでかけてみてほしいと思います。もしかしたら、「ここは居心地がいい」と思える場所に出会えるかもしれません。

 子育ての情報に関しては、子育て中のお父さんやお母さんのほうが、インターネットで情報を集め、賢く取捨選択されているなあと感心することもしばしばあります。そうやって、じょうずに情報を手に入れるということも、社会とつながっていることになるような気がします。

 でも、やはり人と人とのつながりは、子どもたちにとっては大事なことです。じぶんとはちがう人を認め、受け入れることがあたりまえにできたら、これから生きていくなかで「幸せだ」と感じる力を得ることができる気がするのです。

「地域の一員」と、子どもなりに感じられるのが最初の一歩かも。

 社会全体のみんなが、ほんの少し、できることやってみる。となりの家の人に「おはよう」と言ってみる。犬を連れて散歩している人に「かわいいですね」と犬の名前をきいてみる。そんな親の姿を見て、子どもたちは、「じぶんも地域の一員」と感じられるのではないかなあ、と。

 休みの日には、渋滞などを心配しなくていい、近所の公園で過ごすのがおすすめです! きっと、何回か通っているうちに友だちもできるはず。


 最近、子育て真っ最中のお母さんたちと「絵本をもってあつまろうかい」と題して、午前中の1、2時間、好きな絵本をもって公園や絵本屋さんの2階を借りたりして、ワイワイ集まっています。呼びかけたときは、ふたりではじめたのに、いまでは10人ほど集まる会に。ひと月に1回、時間が合うときだけに気軽に参加する会になっています。

 日々、大変だなあとあれこれ悩んでいるうちに、あっという間に子どもたちは大きくなっていきます。子どもを育てているだけで、もうちゃんと社会とつながっていて、目の前の子どもの幸せを考えることが、これからの社会を考えていることになると思うのです。

 そして、さまざまな人とのつながりの大切さは、絵本も伝えてくれます。

絵本から感じられる、社会と子どものつながり。

『もとこども』(富安陽子・作、いとうひろし・絵、ポプラ社)
「子どもの声がうるさい」と苦情を言うおとながいる。そんなおとなたちにも、子ども時代があったはず。おじいちゃんも、ママも、3げんとなりのおじいちゃんも、おとなになってから大工さんや先生、パイロットになったけれど、どの人も、「もとこども」だ。世の中は「こども」と「もとこども」でできているというだけのシンプルな内容なのだけれど、絵の中に、妊婦さんや赤ちゃん、おじいちゃんまでいろんな人が描かれているのがいい。いろんな世代の人が集っているだけで絵になるなあと、ほのぼのとした気持ちになります。そして、最後のページには、これから何になろうかなという子どものすがたが。いろんな人たちとつながっていることで、子どもたちは将来を考えることができるのだと伝わってきます。


『あ、あ!』(ねこしおり・文、高橋和枝・絵、偕成社)
小さな男の子が、ねこさんやありさん、いぬさんに、ていねいに「こんにちは」とあいさつをして、「ばいばい」と別れる。0歳の子でも、この本を読むと、「こんにちは」と一緒に頭をさげる。そして、お友だちにも「こんにちは」。最後は手をつないで、みんな一緒におさんぽ。子どもたちは、小さなありにさえも、友だちのように声をかける。わたしたちおとなは、子どもから学ぶことがたくさんあるような気がします。


『わっしょいわっしょいぶんぶんぶん』(かこさとし・作 絵、偕成社)
子どもたちは、この本を読むと声をだして笑います。この絵本の中では、おじいちゃんやおばあちゃん、子どもたちや赤ちゃん、さまざまな仕事をする人たち、みんなが集まって音楽を楽しんでいる。それをよくばりで、いじきたないアクマがじゃまをする。楽しんでいた楽器や、にぎやかな声をだす動物たちも、アクマにとられてしまうのだけれど、小さな子どもが「うたを うたえば いいじゃないか!」と声をあげる。みんなでわいわい集まることの楽しさや、子どもの意見に耳を傾けたり、みんなで考えたり、声に出したりすることの大切さが伝わる一冊。子どもも社会で一緒に生活する一員だということをあたりまえに描いていることに、あらためて感心してしまいます。そして、孤立しているアクマはさみしく、みんなでいるほうが楽しいということが、子どもにもストレートに伝わるように思います。

 


安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。

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今日の1さつ

本を閉じればコンパクトに片付けられて、本を開くと立体的に細かい家具や食べ物など、子どもが楽しく遊べるし、見た目もかわいくて気に入っています。自宅で遊んだり、帰省する時に持って行けば、玩具がない実家でも遊ぶことができるのでこのコンパクトさに助かっています。(6歳・お母さまより)

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