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子育てと絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第14回

自己肯定感が大事、ほめて育てるのがいいって言うけれど……

2022.02.25

自己肯定感を育てるって、本当に大事だと思います。
「自分はだめなんだ」「自分はできないんだ」なんて思わないで、その子らしく育ってほしいとだれもが願っています。


子どもも、2歳にもなれば、友だちと同じようにできないと、くやしがって泣いたり、嫌になってやめてしまったり、おとなと同じような感情を持ちます。また、自我が強くなって、大人からすると面倒くさいと思うことにこだわったり、それまでは素直だったのに言うことをきいてくれなくなったりします。
 
子どもができそうなことさえやらないと、「どうしてやらないの?」「なんでそんなかんたんなことをできないの?」と、イライラしてしまうこともあるかもしれません。
 
その子にはその子なりの思いがあるとわかりたい、と思いながらも、つい怒ってしまうことも。
 
子どもの寝顔を見ながら、怒りすぎたことを「ごめんね」と謝ったり、だめな親だって自分を責めたり……。
 
でも、子どもたちは、そんなお父さんやお母さん、まわりのおとなたちの気持ちに、ちゃんと気づいている気がするのです。
 

いつもできていることを声にだしてほめてみるのもおすすめ

あたりまえにできていることをほめるって難しいけれど、いつもできていることこそ、声にだしてほめるのも、いいかもしれません。
 
子どもを呼ぶときに、「いつも元気な〇〇くん」「走るのが大好きな〇〇ちゃん」と、アクセントをつけて呼んでみるのもいい。
 
あたりまえにできることをあえてお願いしてみるというのも、試してみる価値ありです。
 
「このごみを、ごみ箱に捨ててくれる?」「このおはしだけ、ならべてくれる?」と、できそうなことを疑問形できいてみると、意外と「いいよ!」と答えてくれたりします。そして、できたことを、声にだしてほめる。
 
保育園では、先生たちに「子どもたちをほめてあげてね」とよく言っています。そうすると、「すごい!」「かっこいい!」と、一言で伝えてしまうことが多いので、何がすごいのか、何がかっこいいと思ったのか、具体的に本人だけにわかるようにほめるのがいいのでは?と、話しています。


それぞれにいいところがあることを感じられる絵本

だれにでも、個性があって、可能性もたくさんあって、多少、悪いことをしても、イヤイヤがはげしくても、大丈夫! お父さんやお母さん、まわりのおとなたちも、きっと同じように過ごしてきたはずです。
 
絵本の中には、困ったり、できなかったりすることがあっても、どんな子にもそれぞれにいいところがあるよなあと感じさせてくれる本がたくさんあります。ぜひ、親子で読んでみてください。
 
 
『おめんです』(いしかわこうじ・作 絵、偕成社)
「(おめんを)かぶっているの だあれ?」と問いかけ、おめんをとると、動物があらわれる。おめんはそれぞれの形にカットされていて、目が丸くあいているので、動物たちが本当におめんをかぶっているみたい。子どもたちは何度もしかけをめくって遊ぶ。おめんの形のしかけは、めくりやすいようで、0歳の子たちも喜んで遊んでいる。この本は、動物たちのいいところがさりげなく表現されているところがすてき。シリーズの3冊目では「ひげが かわいい ねずみさん」や「つのが すてきな やぎさん」がでてくる。おめんは、なまはげや能のおめんなど、ちょっとリアルなおめんなのだけれど、それがまたいいのです!

 
 
『ぐるんぱのようちえん』(西内ミナミ・作、堀内誠一・絵、福音館書店)
ずっとひとりぼっちで暮らしていたぞうのぐるんぱが働きに行く。でも、ビスケットを作っても、お皿を作っても、くつを作っても、大きいものしか作れなくて、「もう けっこう」と言われてしまう。ぐるんぱはしょんぼりとでていく。子どもたちはそのようすを見て、自分のことのようにさみしそうな顔をする。でも、12人も子どもがいるお母さんと出会い、幼稚園を開く。60年近く前に描かれた本なのに、何度も読みたくなる。うまくいかないこともあるけれど、心配しなくても、きっとだれかの役に立つし、いきいきできる場所がみつかるよというメッセージが伝わってくる絵本。
 
 
『まっくろネリノ』(ヘルガ・ガルラー・作、やがわすみこ訳、偕成社)
お父さんやお母さん、お兄さんたちはみんなきれいな色。でも、ネリノだけはまっくろ。ネリノは、「まっくろだから」という理由で、お兄さんたちに遊んでもらえない。どうしたらきれいなれるかなと考える。ある日、きれいな兄さんたちがつかまって、金のかごに入れられてしまう。どうしたら助けだせるだろうと考える。ネリノはいつも考えている。だれにでもいいところがあるし、ひとりぼっちでさみしくても、考える力が大事なんだとこの本は教えてくれている気がします。
 

安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。

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