こんにちは。私立保育園で園長をしています、安井素子です。
「はじめまして」かな? それとも「またお会いしましたね」? 「絵本の相談室って何だろう?」って思われるかな? 今月から、この「絵本の相談室」で、子育てで悩んだときに出会ってほしいなあと思う絵本を紹介していきます。どうぞよろしくお願いします。
きょうは、「いやいや期」について! 本当にこの2歳の頃のいやいや期ってなんで、こんなに顕著なんでしょう。
保育園でどのような保育をおこなうのかの指針となることが書かれた「保育所保育指針」の解説の中にはこんなふうにあります。
「自我がめばえ、1歳半ばごろから強く自己主張することも多くなる。自分の思いや欲求を主張し、受けとめてもらう経験を重ねることで、他者を受け入れることができはじめる。」
この「受けとめる」がむずかしい。
「いやいや」で、行くはずだった公園に行けなかったことも
散歩に行きたいと、くつをはこうとする子に「まだ、散歩には行かないよ」と言っただけで、くつを投げてひっくり返り、担任を困らせるということはよくあります。
わたしも乳児クラスを担任していたときは、1、2歳児18人みんなで散歩に行こうとすると、「くつを自分ではきたかった」「手をつなぐ子がちがう」と泣いたり、ひっくり返ったり。
やっと、「さあ、行こう」としたらおしっこ……! テラスから門にたどりつくまでに20分もかかってしまい、行くはずだった公園には行けなかったということが。
それが、なぜか3歳の声をきくころには、すーっと消えていくんです。そして、「いや!」がすごかった子が年中・年長になるころには、わがままをいう2歳児のくつを根気よくはかせてあげようとしたり。
「それはいやだったんだね」と受けとめてみる
「受けとめる」ってむずかしいけれど、受けとめるしかないのかな。「もう! はやくして!」「おいてくよ!」といわないで、「わかったよ、自分でやりたかったんだね」「それはいやだったんだね」と、ちょっと言葉を変えてみるのもいいかもしれないですね(心の中ではイライラしていたとしても!)。
そのうえで、「お仕事、おくれると困るんだ」「電車におくれちゃうんだ」とたとえ小さい子でも、事実をかんたんに伝えていくと意外とわかってくれる子も。
とはいっても、子どもに個性があるように、お母さんやお父さんにも個性があるんですよね。大事なのは、自分が苦しくならないようにコントロールすること。ちょと叱ったくらいで、子どもたちがお母さんを嫌いになることはないので大丈夫です!
そして、そんなときこそ、絵本を読んでみるのがおすすめ。
いやいや期におすすめの絵本
だるまちゃんはてんぐちゃんの持っているものがなんでもほしい。だるまちゃんの要求にこたえて、おおきいだるまどんは、だるまちゃんがいうものをたくさんだしてくれる。ぜんぶ気に入らないだるまちゃんは、自分でいいことを思いつく。
このおはなしを子どもたちと読むと、ちゃんと受け入れてくれる大人がいるから、だるまちゃんは自分で考えることもできるのだと思います。
最近、勤務先の保育園で人気があるのがこちら。
いやいや期の子どもは「いや~」といいながら、遊んで、食べて、おおきくなる!っていうのが、ストレートに伝わってきます。
こんな風に「いや~」という子が絵本になっているってことは、いやいや期ってきっと特別なことじゃなくて、誰にでもおとずれることなんですよね。
もう!って思ったらちょっと深呼吸。全身でいやを表現する子ども本人が、一番混乱しているのではないかな……。
安井素子(文・写真)
編集部より
「やだやだ」や「だめだめ」といえば、こちらもおすすめ!
ノンタンのシリーズは、ほかにも、子どもたちが共感できるノンタンの傍若無人なすがた(!)がいっぱいです。
安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より、公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年近く。1997年から、4年間、椎名桃子のペンネームで、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、園での子どもたちとの日々をエッセイにつづる。書籍に、名古屋の児童書専門店メルヘンハウスでの連載をまとめた『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)がある。2019年から愛知県春日井市にある、マ・メール保育園の園長をつとめる。また、講師として、保育士を目指す大学生に子どもたちのことを教える講義をおこなっている。保育の世界にとっぷりとつかり、子どもたちとの時間を楽しむ日々をおくっている。