教室に仲の良い友だちがいない、友だちはいるけどなんだかいつもひとりぼっちの気分……そんなさびしい気持ちになったことはありませんか。『ワニのガルド』(おーなり由子 作・絵)のガルドは、ある朝、転校してきたばかりで心細い思いをしていたヒナちゃんのもとにやってきた、ワニ! ヒナちゃんとワニのおかしくて、あたたかな物語です。
学校に、いきたくないな……と歯をみがいていたら……
ヒナちゃんは2学期に引っ越してきたばかりの、小学3年生。ある朝、こころの中で(学校に、いきたくないな)と思いながら、いつもの自分のみどり色の歯ブラシを口にくわえると……なんと、その歯ブラシが口の中でぐにゃぐにゃと動くではありませんか!
おどろいて歯ブラシを口からぬきとると、なんとその歯ブラシは小さい「ワニ」だったのです。ぽんと音をたてて、大きくなったそのワニの名前は、ガルド。ガルドは、ヒナちゃんの学校についてきますが、どうやらほかの子たちには姿が見えないようです。休み時間、ひとりでいるヒナちゃんをみて、ワニはこういいます。
「やっぱりね。あんた、ともだちいないんだ。だから、おれのことが見えるんだな」
でも、どうやらいつも友だちに囲まれている、同じクラスのアヤカちゃんにもガルドがみえるみたいで……。
ひとりぼっちの気分のときの、おまもりに
この本を書いたのは、元々漫画家として活躍され、近年は絵本も制作するおーなり由子さん。全ページに文章とともにカラーの挿絵が描かれ、ヒナちゃんがガルドと一緒に過ごすことで元気を取り戻していくようすや、ちょっと口のわるいガルドのとぼけた愛嬌が伝わってきます。
おーなりさんは、この本のあとがきで「ひとりぼっちの気分のとき、この本で出会ったガルドが、星のようにまたたいて、だれかと出会うための、おまもりになってくれますように。」と書いています。
ヒナちゃんとガルドの軽快なやりとりを楽しみながら、だんだんと心がいやされ、ガルドからの何気ない言葉にちょっとじんとしてしまう、とっておきの物語。(気になるアヤカちゃんのことについてはぜひ本をお読みください!)みなさんの、お守りとなる1冊になってくれたらうれしいです。