何かを片方だけなくしてしまった! という経験をしたことはありませんか? たとえば、イヤリングやピアス、イヤホン、靴下……今回ご紹介する絵本は『ふたつでひとつ』(かじりみな子 作)。お母さんからもらった大切な手袋をなくしてしまった女の子のお話です。
お気に入りの手袋を片方なくしてしまった女の子
今日は、友達と公園に遊びに行く日。「わたし」は、羽織ったジャンパーのポケットに、適当にお菓子と手袋を突っ込んで、「いってきまーす」とバタバタ勢いよく家を飛び出しました。そんなふうだから、途中で手袋が片方落っこちたことに気づけなかったのです。
夕方、そろそろ帰ろうとポケットに手を入れると……持ってきたはずの手袋が、片方ありません!
「ママが わたしのために あんでくれた たいせつな てぶくろなのに…」
家に帰っても、気がかりなのは手袋のことばかり。誰かが拾ってしまったのかな。カラスが巣に運んだのかな。トラックの車輪に巻き込まれちゃったのかな……。きちんとカバンに入れて持っていけばよかった。後悔した「わたし」は、次の日からいろんなところを探します。
そんなふうに手袋を探し回っていたある日、前を行くベビーカーの赤ちゃんの足から、靴がポロッと落ちました。
「たいへん! わたしと おんなじことに なっちゃう」
拾ってあげようとした矢先……「あっ!」なんと猫が、靴をくわえてどこかへ走り去ってしまったのです。「こら! まてー!」と、猫を追いかけた先にあったものとは?
作者はかじりみな子さん!
作者は、『ゆきがふるまえに』などの「ラビッタちゃん」シリーズで絵本作家デビューした、かじりみな子さん。「わたし」の不安な気持ちやうれしい気持ちを、わずかな目線の動きや表情で見事に描きます。かじりさんご自身が手袋をなくした経験から着想し、その後の子育てや、リハビリ施設での勤務経験などを経て、本作が完成しました。
「『ふたつで ひとつ』ってこと、なくして はじめて きがついた。」
これは絵本の最後のページの言葉です。ふだんあまり気に留めていないけれど、かけがえのないもの。なくてはならないものを持っているすべての人の心に沁みる一冊です。