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絵本&読み物案内

猫と人間が住む、ふしぎな森の物語。ますむらひろしのファンタジーコミック「アタゴオル玉手箱」シリーズ

2022.07.11

漫画家・ますむらひろしさんのライフワークとも言える漫画シリーズ「アタゴオル(ATAGOAL)」。そのシリーズのひとつ、「アタゴオル玉手箱」(全9巻)が偕成社から出ていることをご存じでしょうか? 今回はアタゴオルの魅力と、このシリーズの内容をご紹介します。


「アタゴオル玉手箱」のキャラクターたち

 物語の舞台は「アタゴオル」という森。ここでは猫と人間が同じ言葉を話し、ともに生活しています。

 主人公は、大きな猫のヒデヨシです。寝ても覚めても食べることが一番のヒデヨシは、自分の欲望に正直で、望みをかなえるためなら、泥棒をすることもへっちゃら! そんな困った一面もありますが、無邪気でまっすぐなヒデヨシはまぶしく、読者はすっかり魅了されてしまいます。

 ヒデヨシの親友が、人間のテンプラ。おだやかな性格のテンプラは、暴走しがちなヒデヨシのよき理解者であり、ストッパー役でもあります。楽器の演奏が得意で、度々その腕前を披露しています。

 もうひとりの親友は、猫のパンツです。パンツはヒデヨシと対照的にとても頭がよく、大昔の文字を読み解いて謎を解決するなど、頼もしい存在。冷静沈着で、テンプラとともにヒデヨシをいさめる役目も担っています。

 このほかにも、ふしぎな能力を持ったツキミ姫、コーヒー店を営む唐あげ丸、ヒデヨシの弟分ヒデ丸など、ユニークな住人たちがいます。

 

ふしぎな森「アタゴオル」で巻き起こるのは?

 アタゴオルには、ふしぎな生き物や植物、鉱物がたくさんあり、それらをきっかけにして、日々ふしぎな出来事が起こります。
 
 たとえば第1巻には、こんなものが登場します。
 
・いいにおいの粉を吹き、その粉をかけたものは数が増えるという、生きている鉱物「キナコ石」
・食べると動物が言葉を話せるようになるせつぜつバナナ」
ゆきぬまの底で見つかった、入ると涼しくなる「冷やしつぼ」
 
どれも気になるものばかりではありませんか? こうしたアイテムに出会い、ヒデヨシや仲間たちは、ふしぎな体験をするのです。
 
 もちろんヒデヨシは、毎度型破りな行動でみんなを驚かせます。「キナコ石」の粉を手に入れたときは、テンプラから「粉が体につくと大変」と教わったにも関わらず、いいにおいに耐えきれず、粉をペロペロとなめてしまいますし、暑い夏、お店の「冷やしつぼ」に入って涼むと、もっと涼みたい、とそのつぼを盗みだしてしまいます! その結果どうなってしまうのか? それは本を開いてたしかめてみてくださいね。


ますむらひろしのライフワーク、「アタゴオル(ATAGOAL)」とは

 アタゴオルを舞台としたコミックは、「アタゴオル玉手箱」シリーズのほかにも、「アタゴオル」(KADOKAWA)などいくつかあり、複数の出版社から刊行されています。短編から中・長編まで、読み切りや続きものを織り交ぜた構成になっています。
 
 作者のますむらひろしさんは、この「アタゴオル(ATAGOAL)」をライフワークとして長く執筆しているほか、宮沢賢治作品の漫画化も多数手がけています。偕成社では、「ますむら版 宮沢賢治童話集」として『カイロ団長/洞熊学校を卒業した三人』『銀河鉄道の夜 最終形/初期形[ブルカニロ博士篇]』を刊行しています。
 
 アタゴオルには、宮沢賢治の描いた架空の町「イーハトーヴ」とどこか似た雰囲気があります。また、アタゴオルがあるとされる「ヨネザアド大陸」の「ヨネザアド」の名は、ますむらさんの出身地である山形県米沢市からとっているそうで、こうしたことからも、賢治作品と共通したものが感じられます。

「ますむら版 宮沢賢治童話集」の2作


 奇想天外で神秘的なアタゴオルの森で起こる出来事は、どれも夢の中のよう。読んでいると、自分もアタゴオルの世界に溶け込んでいくような感覚をおぼえます。
 そんな夢見心地になれることこそが、「アタゴオル玉手箱」の魅力です。みなさんも、この世界へ旅をしてみませんか?

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