「こんなとき、こんなところで、こんなものが食べられたら、最高だなあ」と、妄想をふくらませたことってありませんか? 今回は、そんな食いしんぼうな妄想から生まれた絵本『デリバリーぶた』(加藤休ミ 作)をご紹介します。
どこへでも食べ物を届けてくれる、デリバリーぶた!
デリバリーぶたは、どこへでも食べ物を届けてくれる配達ぶたです。あるとき、漁師がいいました。
「まいにち たいりょう。とれたての さかなを たべるのが、おれの たのしみ。でも、きょうは やいた にくが たべたいな。ああ、この ひろい うみの うえで たべたいなぁ。」
そのとき、空から声がしました。「デリバリーぶた! おまちどおさま~」
配達ぶたが自転車にのって届けてくれたのは、焼きたての焼き鳥と、おまけのつくね。海の上で食べる焼き鳥は格別です。大満足した漁師はお礼に、釣った魚をわけてあげました。
あるとき、登山家が世界で一番高い山に登りました。
「やったぞ! ここが てっぺんだ。でも、さむいよー。ああ、いま あたたかいものが たべたいよー。」
そのとき、下から声がしました。「デリバリーぶた! おまちどおさま~」
醤油と味噌と、塩ラーメン! 熱々のラーメンを食べたら、みんなそろって力がわいてきました。登山家はお礼に、あっという間に山をおりられるパラシュートをあげました。
作者の妄想から生まれた絵本
この絵本は、作者・加藤休ミさんが「世界一高い山のてっぺんでは絶対に食べられないけど、食べたら絶対においしいものって、なんだろう?」とふと考え、「熱々のラーメン!」と思いついたところから生まれました。
雪山を何日もかけて登り切った瞬間のすがすがしい気持ちや、身体にのしかかる大変な疲労感を想像してみてください。そこに湯気がもうもうとたった、熱々のラーメンが一杯あったなら、どんなにうれしく、どんなに胃にしみわたるでしょうか!
デリバリーぶたは、「ああ、今ここであれが食べたい……!」という人々のもとに、食べ物を届けます。届ける先は、山でも海でも、はては宇宙までも! 「こんなとき、こんなところで、こんなものが食べられたら、最高だなあ」という食いしんぼうな妄想をはたらかせながら、ぜひ読んでみてください。
ちなみに、加藤休ミさんの絵は、実はすべてクレヨンとクレパスで描かれているんです。独自の手法で描かれたリアルな食べ物の絵の数々が、読者の食欲を大いにそそりますよ!