小学校の理科で習う知識をヒントに学校でおこる不可思議な事件の謎をとく、科学×ミステリー『科学でナゾとき!わらう人体模型事件』。理科は苦手だったという著者のあさだりんさんが、お子さんと参加した科学教室をきっかけにそのおもしろさに開眼し、謎解きとかけあわせて書きあげた連作短編集です。小説が好きな子はもちろん、理科好きの子にもおすすめします。
学校でおこる事件のナゾを科学の力でときあかせ!
主人公は、自称「パーフェクトな」児童会長・彰吾。最近のもっぱらの悩みは、新しく彰吾の学校に赴任してきた変人の理科教師、キリン先生が、じつは父親であること! 学校ではそのことをひた隠しにする彰吾でしたが、校内のあちこちで、不思議な事件が起き、父親の科学的アドバイスに頼ることになります。
一見、誰からのいたずらか、偶然かと思われる事件にも、冷静に状況を分析していくと、科学の力がひそんでいることが……!
短編集は4話を収録。どの話にも「あ、これ授業で習った!」というキーワードが登場します。
●暗い理科準備室にひびく、わらい声の正体は? <わらう人体模型事件>
事件の鍵は「音の伝わり方」。誰もいない理科室で、人体模型から笑い声が聞こえてきた。ほんとうに人体模型が笑ったのか、それとも……。
●転校生がえがいた緑色の夕日のなぞ <太陽は何色? 事件>
事件の鍵は「光の波長」。太陽を緑色に塗っていることをからかわれ、腹を立てた転校生。緑色の太陽はあるのか?
●ぬれぎぬをきせられた彰吾の運命は!? <消えたリップクリーム事件>
事件の鍵は「液状化現象」。同じクラスの女子のリップクリームを盗んだ犯人にされてしまった彰吾。なぜ下校時にはなかったリップクリームが、翌朝花壇にあらわれたのか?
●とつぜん赤いなみだを流す人形のひみつ <人魚姫のなみだ事件>
事件の鍵は「酸性とアルカリ性の性質」。図書室に生徒を呼ぶために置かれた人魚の置物が、突然赤い涙を流した! いったいなぜ?
著者はデビュー作にして、ヒット作となった剣道小説「まっしょうめん!」シリーズのあさだりんさん
著者は、これが2シリーズ目となるあさだりんさん。前作、剣道小説「まっしょうめん!」で等身大の女の子が、行きつ戻りつしながらも剣道と真摯に向き合い、心と身体を成長させていく物語が注目を集めました。
「まっしょうめん!」は、2作目を書いた後に自身も剣道を習い始めたというあさださん。今回の「科学でナゾとき」シリーズを書くにあたっても、自宅で実験をしながら書かれだのだとか!
事件の謎が解けたあとは、実際に自分でも同じことができるか確かめてみたくなる。理科の授業もまた別の角度でおもしろさを発見できるのではないでしょうか。対象は小学校高学年から。ソフトカバーで読みやすい「偕成社ノベルフリーク」のなかの1冊です。