『陰陽師』などの人気シリーズを手がける作家・夢枕獏さん、『ピンポン』などで熱烈な支持を集める漫画家・松本大洋さんのお二人による初の絵本『こんとん』。
題材となったのは、中国神話に登場する「渾沌(こんとん)」の伝説です。カオスと同義で語られる「こんとん」を、愛しさをこめてあらたな解釈で語った作品です。
名前がないので、誰でもない。誰でもないから、何にでもなれる。それが、こんとん
こんとん こんとん
たたいてるんじゃないぞ。
こんとん こんとん。
名前じゃないよ
まだ 名前は ないからなあ。名前が ないので
だれでも ない。だれでも ないのに
だれでも ないから
なんにでも なれる。それが
こんとん
ということなんだなあ。
語りかけるようにはじまる、こんとんの物語。
こんとんは、6本の足を持ち、6枚の翼を持っていますが、目も耳も鼻も口もありません。けれども、いつも空を見あげて笑っているのだそうです。
そんな、こんとんのところに、ある日、南の海の帝と北の海の帝がやってきます。帝たちは、こんとんに、2つの目、2つの耳、2つの鼻の穴、そして口、あわせて7つの穴を作ってやることにしますが–––– 。
「愛しい」存在という、あらたな解釈
「渾沌」は中国に伝わる、伝説の生き物。古典の授業でならう『荘子』のなかで出会ったという方も多いでしょうか。カオスと同義で語られるこの「こんとん」を、今回、夢枕さんが「愛しさ」というあらたな解釈をこめて描きました。
心地よいリズムの言葉と、なつかしさと新しさのあるイラストが、なにものでもない「こんとん」という存在への、読者の思いや想像をかきたてます。気づかないうちに力の入っている私たちの毎日に、ふと新しい風を吹かせてくれる、やさしい物語です。
物語は、このように締めくくられます。
こん とん こん とん
きみのことが すきだよ。
愛しい「こんとん」の姿に、あなたもぜひ出会ってみてください。
松本大洋原画展 絵本『こんとん』(夢枕獏・文)刊行記念
会期:2019年2月19日(火)〜2019年3月15日(金)10:00~22:00(※最終日は17:00まで)
会場:青山ブックセンター本店内・ギャラリースペース
住所:東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B2F
関連サイト:http://www.aoyamabc.jp/fair/taiyo-gallery/