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作家が語る「わたしの新刊」

読み聞かせで大人気の「ほげちゃん」シリーズ。最新刊は、おばけのお話?!『ほげちゃんとおばけ』やぎたみこさんインタビュー

2023.06.15

ほげちゃんは、とぼけた顔が愛らしいカバ……ではなくって、クマのぬいぐるみ。毎日ちいさなゆうちゃんに振りまわされて、苦労がたえません。おや、今回は、ゆうちゃんが途中で読むのをやめちゃった絵本が気になって眠れないようです。ちょっとクセのあるキャラクターの誕生エピソードから、最新刊制作の苦労まで、 作者のやぎたみこさんにたっぷりとお話を伺いました。

あらためて、『ほげちゃん』が生まれたきっかけを教えてください。

 原案は、絵本作家としてデビューするまえに通っていた絵本スクールの、「いつも家に転がっているもので絵本を作ろう」という課題で作った作品です。

 作品の前半は事実に基づいています。
 「いつも転がっていた」のは、友だちが私(もう大人)の誕生日に贈ってくれたパペットタイプのぬいぐるみ。それが変な顔で……。「なんでこれを私に? いったい何の動物?」というのが正直な気持ちでしたが、妙に愛着がわいてきました。
「ほげ~」と鳴きそうなので、ほげちゃんという名前をつけ、いつも居間に置いて、家族みんなで遊ぶようになりました。

 子どもはもう小さくなかったけど、学校から帰ってきてほげちゃんが見当たらないと、ソファーの下などから見つけだし、「どうしてこんなところにいるの?」と話しかけます。すると「ひどいめにあった」(ほげちゃんの口ぐせ)と、ほげちゃんがその日どんなひどい目にあったのかを訴える––––
 こんな調子で遊びはどんどんエスカレートし、「ほげちゃんは58歳の男やもめで、全身が水色なのはお酒の飲みすぎで内臓が悪いから、正式名は薬師丸ほげラミレス(苗字とミドルネームはたまたまテレビに出ていた人の名前をもらった)」というように、家族間のキャラクター設定ができあがっていったのです。

絵本のなかのほげちゃんも、日々ひどいめにあっています。

 その後、私は絵本作家になり、偕成社で『おはぎちゃん』を出したあと、編集の矢作さんから間をおかずに新作を、とご依頼をいただきました。
 あれこれ考え、もしかして設定を変えれば『ほげちゃん』は子ども向けの絵本にできるんじゃないかと思いつき、58歳のほげちゃんを5歳8ヶ月に変更して、新しいラフを作ることにしました。

 これが、『ほげちゃん』が生まれたきっかけです。

絵を描くための参考につくった、ほげちゃんが住むお家の模型があるそうですね。

 今回は、1作目で作った模型を使いました。
 3作目でも使ったので、もうボロボロです。今回は今まで出てこなかった寝室も出てくるので、間取り図まで作り、作り直すかどうか悩んだ挙句、ギリギリまだ以前のものが使えたのでやめました。
 次にまた、家の中のお話になる場合は、作り直そうと思います。

 ちなみに、2作目では動物園の檻やサル山、3作目は公園、4作目はひろくんの家、はしご車、おともだち(8体)を作りました。

ゆうちゃんの家

絵本『ほげちゃん』に出てくるゆうちゃんの家

『ほげちゃんまいごになる』の動物園

絵本『ほげちゃんまいごになる』の動物園

『ほげちゃんまいごになる』のサル山

『ほげちゃんとこいぬのペロ』の公園

『ほげちゃんとおともだち』のひろくんの家

『ほげちゃんとおともだち』のおもちゃたち

シリーズ5作目のテーマは「おばけ」。どうしてこのテーマにしたのでしょうか? また、やぎさんご自身はおばけや怖い話は好きですか?

 そもそもは、ゆうちゃんが買ってもらったいろんな絵本(5冊くらい)に影響されるほげちゃんを描こうと思い、いろんな絵本がどんな絵本か考えていたときに思いついた1冊が、「おばけの絵本」でした。

 ほげちゃんはおばけが怖いのかどうか(自分がおばけみたいなもんだし)考えていると、「こわくない!」と強がるほげちゃんと、本当は「こわい~!」と怯えるほげちゃん両方が描きたくなって、「おばけの絵本」に翻弄されるお話に決めました。

 私は、西洋のおばけは平気ですが、日本のおばけは苦手です。テレビで怪奇特集などやっていたら、ビビりながら消します。

今回は、作中に出てくる絵本『おばけのおまつり』が巻末に載っています。この絵本も一部だけでなく、まるまる1冊ぶん構想されたんですね!

 ほげちゃんがおばけの絵本に翻弄されるお話と決めて、まず、あらすじを書きはじめました。パパが買ってきたおばけの本をゆうちゃんが怖がって、途中で読むのをやめてしまう……ほげちゃんはその続きが読みたくなって夜中に起きだして絵本を開く……ここまで書いたところで、その先がまったく浮かばず、書けなくなってしまったのです。

 そこでとりあえず、そのおばけの絵本の内容を具体的に考えることにしました。
 半月の夜に、家にあるいろんなものがおばけになってしまう、というお話。イスおばけ、テーブルおばけ、おもちゃも食べ物もみんなおばけ……いろんなおばけを想像していると、だんだん楽しくなってきました。

 そもそもなんでパパはこの絵本を買ってきたの? ほげちゃんにそっくりなぬいぐるみのおばけが出てくるからっていうのはどう? それなら、ムウにそっくりな猫のおばけが出てくるのもいいんじゃない? ……と自問自答をくりかえし、『おばけのおまつり』のお話ができあがりました。

 そして、それを足がかりにして『ほげちゃんとおばけ』のお話も書くことができました。

パパが買ってきた絵本『おばけのおまつり』を読むゆうちゃん。

今作のお気に入りの場面はどこですか?

 ほげちゃんが半分のお月様を見上げる見開きです。

最後に、読者にメッセージをお願いします!

 おまけの『おばけのおまつり』もぜひ読んでくださいね。
 そのうしろの「ほげちゃんミニハウス」も、ぜひ作ってみてください!

やぎさん手作りのほげちゃんミニハウス。『ほげちゃんとおばけ』のうしろ見返しに、型紙と作り方が載っています。

ありがとうございました!


やぎたみこ

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