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作家が語る「わたしの新刊」

根っこで対話する植物たちのいとなみを幻想的に描く『はるとスミレ』

はるちゃんは植物が大好き。月明かりが紫に輝くある夜、部屋に置いていたスミレの花がむくむくと動きだして……。スミレとの夜のお散歩を通して、自然のいとなみを幻想的に描いた『はるとスミレ』。本作が絵本デビュー作となったetoさんにお話を伺いました。

今作がはじめて手がけた絵本ということですが、もともと絵本作家を目指されていたのでしょうか?

はい。子どもの頃に絵本がたくさん家にあったので、「さく・え」って何だろう? からはじまって。
絵本を「作る人」がいることを知りました。『ピーターラビットのおはなし』で、身近な自然が描かれていたことに興味を持ち、私もやる! となりました。

しかし、仕事、結婚、出産などで、いったんすっかり絵本のことを忘れてしまったんです!
39歳のときに、「このままじゃ死ねないな」と絵本出版への再挑戦をスタートしました。

はじめて作ってみていかがでしたか?

発見の連続でした。
まず、自分自身が「どんなことが好きで興味を持つ人間なのか」を客観視できましたし、長期にわたる試行錯誤に初めて挑みました。

そして、わたしが今までたくさん読んできた絵本には、単なる創作・仕事という枠をはるかに超えた、作家さんの情熱や子どもたちへの愛でできていたのか! とわかりました。

nowaki絵本ワークショップ※から生まれた絵本だそうですね。編集者の筒井さんとは、どのようなやりとりがあったのでしょう。
※フリーの絵本編集者・筒井大介さん主宰の絵本ワークショップ。

元々は、板橋区立美術館の夏のアトリエというワークショップで着想を得た絵本なんです。ひとりでやっていてもどうにも進めなくて。ご縁がありnowakiに飛び込みました。

筒井さんとお話ししてみて、まず感動したのは、わたしたちを「これから絵本作家になる人」として接してくださったこと。もう、はっとして。本気で取り組もうと。

ラフを月2回出しては読み聞かせして、講評して改訂の繰り返し。
筒井さんとの対話を通して、「いちばんわたしが伝えたいことって、何だろうか」と、絵本の世界観を深めるための、気づきのセッションのような、有意義なやりとりでした。

夏のアトリエにて描いた初期のラフ。

nowakiワークショップで進んだラフと原画。

植物たちは根っこで会話をしている、という学説をもとにして生まれた本と伺いました。これを題材にしようと思ったのはなぜでしょうか。

「題材に」というよりは、たくさんの植物のふしぎの中の「ひとつにしぼるきっかけ」となりました。
子どもの頃から生き物をじっと観察してるのですが、「もし、自分が植物だったら、世界はどんな風に見えるのかしら?」と、もっと知りたくなったときに、『植物は〈知性〉をもっている  20の感覚で思考する生命システム』(著:ステファノ・マンクーゾ+アレッサンドラ・ヴィオラ 訳:久保耕司 NHK出版)という、最新の植物の研究の本と出会いました。

数ある知見の中でも、衝撃だったのが、「根っこのコミュニケーション」。
読んだときに、地下の根っこたちの景色がぶわーっと見えて。ああ、これだ、と。

「ひとつの木と仲良くなると、世界中の同じ種類の木と友だちになる」という話が、ずっと心に残っていたんですが、その問いに対する、科学的な視点からの答えを、本の中のステファノさんから提示された感じでした。(その答えは絵本の中にあります!)

大人になってからの気づきの中でも、視点がガラッと変わった刺激的な体験だったので、このテーマになりました。

お花の中でも、スミレを選ばれた理由はありますか?

はい。幼稚園の頃に、庭いっぱいに小さなビオラがたくさん咲いた春がありました。
人見知りのわたしにしてはめずらしく、スミレが好きな先生を、家まで引っ張ってきておどろいたと母から聞いています。

今回の原画は「リソグラフ」という印刷方法でできているとうかがいました。この手法の魅力とは、なんでしょう。また、リソならではの苦労や、こだわりポイントがあればおしえてください。

リソグラフは、オフセットよりも発色の良い色と、インクの重なった感じが美しいことと、かすれや版ズレなど偶然の要素が大きいところが、おもしろいんです。

また、わたし自身の制作スタイルが、すべてアナログでもなく、フルデジでもないミックス具合。そのバランスが、リソグラフにぴったりでした。

ただ、何枚も刷ってみないとどんな仕上がりかわからないし、印刷できる大きさも制限があるため、ひとつの絵でも、30~40回以上試し刷りをしています。

青と紫の色が美しいです! CMYKの中でも特別なインクを使用したと伺いましたが印刷において苦労された点はありますか?

これは、わたしが苦労したというよりも、
デザイナーさんと印刷所さんが尽力してくださいました(笑)
原画のリソグラフとかなり近い仕上がりにしてくださってます。
驚きの再現度でびっくりしています。ありがとうございます!

絵本のなかで、etoさんのお気に入りのページがあれば教えてください。

どのページも好きですが、ふたりが根っこたちを感じながら歩く根っこの見開きと、家にむかう見開きです。いちばん、私が得た新しい視点に近いです。

次回作のアイデアなどはすでにあるのでしょうか?

春のつぎは秋について描きたいです。すでに練っているのでお楽しみに。

読者の方へメッセージがあれば、お願いいたします。

ふだん、当たり前にながめている植物たちを、『はるとスミレ』の絵本を通して、もっと身近に感じていただければうれしいです。はるちゃんのように裸足で野原を歩いてみると、もっと体ごと発見がありますよ。
植物って、そして地球っていいなあと、感じるきっかけになるとうれしいです。

次回作も楽しみにしています。ありがとうございました!


eto
1979年栃木県生まれ。武蔵野美術大学・視覚伝達デザイン学科卒。デザイナーを経て2006年よりイラストレーターとして活動。2019年に絵本制作を再開し、ボローニャ国際絵本原画展コンペ2022ファイナリスト選出。『はるとスミレ』で第22回ピンポイント絵本コンペ最優秀賞受賞。子どもの頃から身の回りの自然観察が大好き。東京都在住。

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今日の1さつ

政権争いも本格的に起こり、大人でも読んでいてドキドキしました。また早く続編が読みたいです。小森さんの小説に出てくる女性は強く魅力的な人が多いですが、今回のサンドラは少し人間味を強く感じ、そこも魅力的でした。また風景が目の前に広がるような描写がとても好きです。(40代)

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