ツリーハウスって、憧れますよね。ハンモックをつるしたり、さわやかな風を感じたり…。きょうご紹介する『きのうえのおうちへようこそ!』(ドロシア・ウォーレン・フォックス 作/おびかゆうこ 訳)に出てくるツイグリーさんは、まさにそうやって暮らしています。
でも、気ままに暮らすツイグリーさんは、町で変わり者といわれているようで…。
いぬのニャンコと暮らす、変わり者のツイグリーさん
大きなソファーやテレビもある、快適な木の上のおうちで暮らすツイグリーさん。一緒に暮らしているのは、いぬのニャンコです。ちょっと変わった名前ですが、
好きなことしかしないツイグリーさんは、人がきらい、というわけではないけれど、木の上で暮らしているうちに、人に会うのが苦手になったよう。町でのお買い物はなんとニャンコにおまかせ!
こんなふうに、木の上のおうちで一緒にあそんでいます
町では「とんでもない」とうわさされています。とくに市長の奥さんは、人と関わらないツイグリーさんに。
「わたくしが、わざわざ たずねていったのに、あのかた、かくれてしまいましたのよ。れいぎしらずにも ほどがありますわ。」
町をおそった大雨! 困った町の人たちの目にうつったのは…
そんな町に、あるとき嵐がやってきました。風が吹きあれ、川から水があふれ、橋も流され…とうとう町は海のようになってしまいました。ボートに乗ったり、屋根にのぼったり、ぶたたちはえさばこを舟がわりにしたりと、みんな必死です。
そんなとき、みんなの目に入ったのが、木の上のツイグリーさんのおうち! これは町の一大事、と思ったツイグリーさんは、ニャンコやくまたちと、木の上のおうちをととのえて待っていました! 「みなさん ぜんいんを おむかえします。きのうえは あたたかいですから、からだも すぐに かわきますよ!」
いざというときは助け合う。昔から愛される絵本のメッセージ
この絵本を描いたドロシア・ウォーレン・フォックスさん(1914-1999)が長年暮らした町の家の目の前には、大きな池があり、その池の真ん中に浮かぶ島には、大きなシダレヤナギの木が立っていたそうです。
実際に1955年にハリケーンがこの町をおそい、。そんなとき、池の真ん中のシダレヤナギの木が、堂々とそびえたっているように見えたのかもしれません。
そんな頼もしい木の上から、だれかが助けてくれたら、どんなに心強いでしょう! ツイグリーさんはそれまで好きなことしかせず、人が苦手だったけれど、こんなときにそんなこと気にしていられない! と力を発揮しました。アメリカで50年以上愛されるこの絵本からは、「いざというときは何がなんでも助け合う」というメッセージが伝わってきます。
意外なことに、日本で訳されるのはこれが初めて。色あせないこのメッセージを、たくさんの人に受け取ってほしいです!