保育園の子どもたちの誕生日には、絵本を1冊プレゼントしています。
担任が選ぶことになっているのですが、これが意外とむずかしい。
その子にピッタリの1冊を選ぶって保育士にとっても簡単ではなく、絵本のカタログやパソコンで調べ、どの先生も悩みながら選んでいます。

「これとこれならどっちがいいと思いますか?」
「電車が好きな子だけど、1歳の子に合う電車の本ってこれでいいかな?」
こんなふうに、園長のわたしのところへも相談にきてくれるのだけれど、たくさん出版されている絵本の中から1冊を決めるのは、至難の業です。
保育園にある本ではなく、新しい本をプレゼントしたい気持ちもあり、ますますむずかしい。
そのときぴったりでなくても、ページを開くときがきっとくる。
わたしの子どもが学童保育に行っていたころ、誕生日に1冊の絵本をもらってきました。今ページをひらいて「8歳のおたんじょうびおめでとう!」と書いてある文字を見ると、こんなときもあったなあとなつかしく感じます。
プレゼントしたときはちょっと難しかったり、喜ばなかったりすることもあるかもしれないれど、思い出してページを開くときがきっとくる。絵本には時間を越えていく魅力があると思います。

保育園から1冊の絵本がプレゼントされるってすてきだと、職員みんなで決めたのだけれど、1冊を選ぶのは思った以上に大変。それでも喜んでもらえたらうれしいので、わたしも一緒にあれこれ考えます。
そして、わたしの目から見て「その本よりこっちの方がいいのでは?」と思うことがあっても、よっぽど年齢にあっていないというケースをのぞいて、担任が選んだことの方が大事だと考えています。
秋にぴったりの絵本『もりのかくれんぼう』。
10月が誕生日の年長の女の子。「探す絵本が好きだから、そういう絵本にしようと思うのだけれど、年長になったからストーリーのあるおはなしの方がいいのかなあ」と担任に聞かれました。
わたしの頭の中に1冊の絵本が浮かびました。
「ストーリーがあって、探す絵本で秋にぴったりの本がある!」
年長の女の子の顔も浮かんできて、これしかないという思いで、担任に『もりのかくれんぼう』をすすめました。
「かわいい! いいですね。きっと喜ぶ!」と担任もうれしそうな顔に。

『もりのかくれんぼう』(末吉暁子 作、林 明子 絵、偕成社)
この絵本は、林明子さんの美しい絵で描かれた秋の森の中に、おにいちゃんを追いかけてきたけいこが迷いこむところからはじまります。
森で出会う男の子の名前は「もりの かくれんぼう」。かくれんぼしたくてたまらなかったけいこは、森の動物たちとかくれんぼをします。
森にはたくさん動物がかくれていて、探すのはなかなか大変。すてきな絵に感動するだけでなく、けいこのわくわくする気持ちやどきどきする気持ち、心地よいと感じている瞬間が伝わってくるのがとてもいいと思っています。
子どもたちが、森の動物たちに思いをはせてくれる日がきたらもっとうれしい。もうすぐ誕生日のRちゃん。喜んでくれるといいなあ。


















