わたしたちの目を楽しませてくれる花。花にはそれぞれ「花言葉」があります。花言葉を知ると、別の視点からも花を楽しめますね。今回ご紹介する『ちいさな はなの ものがたり』(斉藤 洋 作/浅倉田美子 絵)は、5つの花についての物語が収録された童話集。花への愛情がわく、やさしい一冊です。
あなたの心にやさしく届く、5つの花の物語
この本に収録されているのは、こんな物語です。
「スズランの ひびき」
「こじまの タンポポ」
「アポロンの あかい バラ」
「しろつめくさの はなかんむり」
「りゅうぐうの ハイビスカス」
ここではサブタイトルにもなっている、「しろつめくさの はなかんむり」のお話をご紹介しましょう。
とある村に、若者と娘が暮らしていました。あるとき、村をでて町で働くことになった若者のために、娘は草原で摘んだしろつめくさで花かんむりを編み、「わたしを わすれないで。」といって、若者に渡しました。
若者は花かんむりを持って旅立ち、3年間町で働きます。その間、娘にもらった花かんむりを部屋に飾っていましたが、ふしぎなことにその花かんむりは、いつまでたってもみずみずしいままでした。
そして4年目に入った日、若者は2つのものを持って、村へ帰りました。あの花かんむりと、もうひとつは……。
お話の最後には、しろつめくさの花言葉が添えられています。
しろつめくさの はなことば
やくそく
しろつめくさの よつばの はを みつけると、しあわせに なるといわれています。
このように、花にまつわる物語と、最後にはその花の花言葉が、全部で5つ収録されています。
斉藤洋さんによる、ファンタジックであたたかなストーリー
作者の斉藤洋さんは、『ルドルフとイッパイアッテナ』「白狐魔記」シリーズなど、数多くの児童文学を手がけています。読み応えのある長編や、歴史ものが多いイメージがあるかもしれませんが、この本はすべてひらがなで、やさしい言葉を使ってつづられており、絵本の次によむ幼年童話として楽しめます。
浅倉田美子さんが色鉛筆で描いた、淡くやわらかい挿絵もぴったり。わたしたちを、夢みるようにお話の世界に連れていってくれます。
あたたかな季節のはじまりに、花の物語を楽しんでみませんか?