春ですね。草木が芽吹き、花が咲き、虫が活動を始める季節がやってきました。きょうご紹介する『地球パラダイス』は、そんな春からはじまる自然界の1年を描いた詩集。詩人の工藤直子さんが、代表作「のはらうた」以前からあたためていたという詩と、画家の石井聖岳さんによる色鮮やかな絵の、豪華なコラボレーション作品です。
「おーい 太陽」からはじまる8つの詩と絵────ああ いい天気だ いい風だ
『地球パラダイス』は、春からはじまる1年間を、花や木、虫などの自然を軸にして描いた詩集です。
はじまりの「おーい 太陽」は、こんな詩です
「おーい 太陽」
綿雲に 花の香りをふくませて
太陽が 空を みがいている コシコシ コシコシ
ときどき その綿雲で
じぶんの顔を ふいている つるり ぴかり
ああ いい天気だ いい風だ
太陽が ひとやすみして見おろすと
花や 草や 虫たちが
おーい太陽
はーい なんだい?
あーそぼ
太陽は 光をこぼして みんなとあそぶ
綿雲も ひっぱりよせて かくれんぼしたりする
ああ 天と地が いっしょに踊っている
ぴかぴか
ぴかぴか
そしてページをめくると、石井聖岳さんの絵がページいっぱいに広がります。
このように、詩と絵が交互にでてくるというページ構成で、全部で8つの詩と絵が登場します。菜の花畑でモンシロチョウがおにごっこを、麦畑で風が麦たちの記念写真を撮ったり……。
雨のあとにアジサイが色づき、気づけば空に赤とんぼが飛び、ページを、少しずつ季節がめぐって最後の冬の詩「ゆれるミノムシ」では、
「ゆれるミノムシ」
(前略)
ミノムシが ゆれると
ツルウメモドキの あかい実も ゆれる
さむいさむい と ゆれる
でも……ほら
「もうすぐ春だよ」と
ミルクいろの空のむこうから声がする
あれは きっと「春」をポケットに入れて
まさに”地球はパラダイス”! 新しい季節を迎えるうれしさが込み上げる一冊
雲や太陽、花、虫たちと「おさななじみ」だという工藤直子さんが描く愛にあふれ、わたしたちに自然の美しさを思い出させてくれます。そして、色鮮やかでパワーに満ちた石井聖岳さんの絵が、よりいっそうそれらのを引き立て。
何気なく見上げる空や道ばたの草花が輝いてみえてくる、魔法の力を持った一冊です。タイトルの通り”地球はパラダイス”であることを胸に、うれしい春を迎えましょう!