舞台はとある欧州を思わせる。貧しく暮らす少年ノアは、怪しげな男爵から「修道院からある本を盗んでほしい」という依頼を受けます。しかしそれは、選ばれし者だけが読める魔導書〈サロモンの書〉でした───。
「実に『物語』らしい『物語』」「ファンタジー好き必見、可愛い動物好きにもおすすめです!」と、刊行前のレビューでも大好評だった、小森香折さんによる長編ファンタジー『青の読み手』(平澤朋子 絵)をご紹介します。
“選ばれし者”だけが読める本をめぐって、物語が動き出す
この物語の舞台は、華やかな文化の中心地として憧れられる国です。しかし、富を謳歌できるのは王家の人々と貴族たちだけで、多くの庶民が貧困に苦しんでいました。
その中でも一番劣悪な環境の地区に住んでいるのが、この物語の主人公である少年ノア。仲間たちとつるみながら、汚い仕事をなんでもこなし、時に盗みも働きつつ、その日その日をしのいでいます。また、そんな生活をしながら数年前に突然いなくなってしまった家族同然の存在、ロゼ姉さんを探しています。
ノアは怪しげな男爵から、一風変わった依頼を受けました。森にある修道院の宝物庫から、一冊の本を盗みだしてきてほしい、そうすれば、ロゼ姉さんの居場所を教える、というのです。
盗みの仕事にも慣れているノアは、簡単な依頼だと考えますが、行先は、修道僧たちが魔術を使うと言われる修道院。宝物庫には不思議な魔法がかけられていて、ノアは苦労して目当ての本を盗みだします。
実はその本はロモンの書〉と呼ばれる魔導書でした。男爵は自身の使う黒魔術の力を強めるために、ノアを使って本を手に入れたのです。
けれど、〈サロモンの書〉を読めるのは、選ばれし者だけ。者が本をひらいても、文字は現れず、白紙のままです。男爵の魔術を前に、なすすノア───と、、本に文字が浮かび上がってきました。なんとノアこそが”選ばれし者”、〈青の読み手〉かもしれないというのです!
さて、ノアは本当に〈青の読み手〉なのでしょうか? そして男爵の企みを食い止めることはできるのでしょうか?
ロゼ姉さんの秘密や王家の行末など、物語はさらに複雑に絡み合い、最後まで目が離せません!
小森香折さんが描き出す、本格ファンタジーの世界
舞台は架空の国ながら、街や貴族と庶民の暮らしなどの描写にリアリティがあり、その様子をありありと想像しながら読み進められます。登場人物も、ノアをはじめ、よき相棒となるネズミ(とある理由で言葉を喋るものの、ときどき言い間違いをする)、意地っ張りだけれど憎めない王女など、魅力的なキャラクターばかり。ぐっと物語に入り込めることまちがいなしです。
小森香折さんによる、本格長編ファンタジー。ぜひその世界に浸ってみてくださいね。
(平澤朋子 絵)