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内気で平凡な女の子は、ある出会いから少しずつ変わっていき…。第66回産経児童出版文化賞を受賞、『たまねぎとはちみつ』

2019.05.13

親でもなく、学校の先生でもない「おじさん」との出会いが、内気な小学5年生の主人公・千春を少しずつ変えていく……。
『たまねぎとはちみつ』は、『うさぎパン』をはじめ文芸書を数多く手がける瀧羽麻子さんが、はじめて子ども向けに書いた物語です。挿絵は、漫画家の今日マチ子さんが担当しています。

第66回産経児童出版文化賞・フジテレビ賞を受賞した本作のあらすじ、魅力をご紹介します。


春、千春はおじさんと出会い、新しい考え方を知る。夏、俊太とぶつかりながらも、次第に前を向けるようになる。

 いつもお母さんの顔色をうかがってしまう弱気な女の子、千春は、ある春の日ふとしたきっかけで、修理屋でアルバイトをしているというおじさんに出会います。はじめは、髪も眉毛もひげももじゃもじゃで大きな体の怪しいおじさんを警戒する千春でしたが、友だちとも家族ともちがう立場から新しい考えを教えてくれるおじさんに、次第に心をひらき、修理屋に通うようになります。

 質問するとなんでも答えてくれる物知りなおじさんですが、自分で考えることの大切さも伝えてくれます。
 
ただし、こっちも気は抜けない。きみはどう思う、とおじさんは必ず問い返してくるからだ。
「わからないことは恥ずかしくない」
おじさんはいつも言う。
「自分の頭で考えてみようとしないことが、恥ずかしい」
 
 また、千春が、ちがう考えかたの友だち2人の間でゆれているときは、こんなアドバイスをくれます。
 
「価値観がちがったって、友だちでいられる」
おじさんが千春の顔をのぞきこんんだ。
「認めればいい。自分とはちがう考えかたも存在するってことを。そのふたりも、おたがいを認められれば、仲直りできる」

 夏になるころ、千春はお店で、クラスメイトの俊太と会うようになります。ちょっと生意気でずけずけと物を言う俊太のことが苦手な千春。でも、次第に打ち解けるようになり、お店でいっしょに過ごす時間が増えていきます。

 おじさんと俊太と千春、ちょっとふしぎな3人で過ごすうち、千春は変わっていきます。以前はお母さんとちがう考えを持っても、どんな顔をされるか怖くて言えなかったのが、自分の考えをきちんと伝えたい、言葉にしたいと思うようになったり、運動会のリレーがゆううつでも、なんとか力を尽くしたいと懸命になったり……。

秋、冬、そして春…… めぐる季節の中、おじさんにも変化が。

 千春にさまざまなことを教えてくれたおじさんもまた、千春や俊太からいろいろな影響を受けていました。以前のおじさんには今とは別の生活があり、修理屋での2人との時間を経て、そのときのことをあらためて考えるようになります。
 
 おじさんが悩みを抱えていることに気づいた千春と俊太は、おじさんのために一肌脱ごうと、ある計画を実行することに。これまでの千春だったら決してやらないような、大胆な計画です。2人の行動は、どんな結果をもたらすのでしょうか?

「今日はたまねぎ、明日ははちみつ」と思えるやさしい一冊

 本のタイトルにもなっている「たまねぎとはちみつ」は、おじさんが千春に教えてくれた、アラビア語のことわざからきています。おじさんと千春の合言葉のように使われるこのことわざ。意味は、ぜひ本を読んでたしかめてみてください。
 
 おじさんの言葉に、読者も「あらたな視点」に気づかされる、心が丸く広くなる物語です。新しい一歩を踏み出すときに、ぜひ手にとってみてくださいね。

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