「天売島」という島をご存じでしょうか。北海道の日本海北部にある、人口300人、周囲12kmの小さな島です。天売島には、毎年さまざまな海鳥がやってきます。ウトウの世界最大の繁殖地、ケイマフリの日本最大の繁殖地、ウミガラス(オロロン鳥)とウミスズメの日本唯一の繁殖地であり、まさに海鳥たちの楽園です。
この島の1年を、ダイナミックな絵でたっぷりと紹介するのが、絵本『うみどりの島』(寺沢孝毅 文/あべ弘士 絵)です。
日本に、こんな島があった!
この本の舞台は、北海道の日本海北部にうかぶ、天売島。筆者の寺沢孝毅さんは、野鳥観察をきっかけにこの島に惚れ込み、住みたいあまりに小学校の教員となって(!)天売島の小学校に赴任し、10年間勤務されました。その後も天売島に住み続け、現在は自然写真家として活動しています。
絵を描かれたあべ弘士さんもまた、天売島を愛し、たびたび訪れているといいます。今作では、島の自然をたっぷりと描き、島の魅力を存分に伝えています。
ではこの島の魅力とは、いったいどんなところにあるのでしょうか?
100万羽もの海鳥がやってくる、天売島の1年
まだ雪が多くのこる3月のはじめ、天売島にウミネコがやってきます。ミャーミャーというウミネコの鳴き声は、島の人たちにとって春のおとずれ、そして海鳥たちがやってくる季節のおとずれを知らせてくれるものです。
雪がとけるころには、ほかの海鳥たちも集まってきます。真っ赤な足のケイマフリ、顔に白い羽毛があるウトウ、ペンギンに似た色合いのウミガラスなどなど。その数、なんと約100万羽! 人口300人の天売島は、春がくると、圧倒的に鳥の数の方が多くなるのです。
緑がめぶく5月ごろになると、海鳥たちは子育ての時期に入ります。それぞれに適した巣で、鳥たちは卵をあたため、生まれたヒナを育てます。島にあるがけは、子育てにぴったりの場所です。
天売島で有名なウニ漁の季節がくると、昔ながらの方法でウニをとる漁師のまわりを、ヒナに魚を持ち帰る海鳥たちが通り過ぎてゆきます。
やがて大きくなったヒナたちは巣立ちをむかえ、親鳥たちとともに、また別の場所へと移っていきます。
鳥たちがいなくなる秋と冬は、天売島の中でいちばん静かな季節。冬にはたくさんの雪がつもります。そして
それぞれの鳥の特徴や特技が、季節の中で描かれる
天売島にやってくる海鳥たちの生き方は多種多様。本の中では、島の1年を追いながら、鳥たちの生きる様子を紹介しています。
春先の海の上に鳥がおおぜいむらがって、まるで海が盛り上がっているように見える、「」。(地元の漁師さんがそう)
魚とりの名人、ウトウは、仲間と力を合わせて魚を追い込みます。
ウミガラスのヒナは巣立ちのとき、育ったがけから勇気をだして飛び降りて、親鳥について沖へと泳いでいきます。
このように、島で見ることのできるさまざまなドラマが、ダイナミックな絵で描かれます。
表紙をめくった「見返し」の部分では、天売島のことが解説されています。
天売島までの道のりは、なかなか大変です。新千歳空港からは、電車・バス・フェリーを乗り継いで約5時間。旭川空港からだと、バスを4つ乗り継いでフェリーに乗って、6時間強の旅だそうです! それでも毎年多くの愛鳥家がこの島を訪れているそうです。
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