ひとり旅を愛する船のり、黒ねこサンゴロウの冒険を描いた「黒ねこサンゴロウ」シリーズ(竹下文子 文/鈴木まもる 絵)。文字が大きく、イラストも豊富、小学校中学年ごろからよめるシリーズながら、うれしさや、悲しさ、せつなさ、さまざまな感情があじわえる、大人っぽい物語です。手にとれば、きっとあなたも主人公サンゴロウのクールな生きざまにあこがれてしまうことでしょう。
「黒ねこサンゴロウ」のはじまり
第1巻『旅のはじまり』からはじまる、全10巻からなる「黒ねこサンゴロウ」シリーズ。
10巻、ながい!と思うかもしれませんが、ぜひ第1巻を開いてみてください。いつも心の片隅であこがれるかたちの冒険へ、あっというまにつれていってくれる作品です。つづきを読まずにはいられない、そんなシリーズなのです。
「しつれい、ここ、あいてるかい。」
サンゴロウがおりるのは、ケンより1つ手前の駅でした。行き先をきかれて、長期出張にでかけているお父さんに会いに行くことを話したケンは、サンゴロウに問いかけます。
「サンゴロウさんは? アライハマに、なにしにいくんですか?」
「おれかい。うん。おれはな。」
サンゴロウは、ぼくの顔をみて、声をひくくした。
「宝さがしだ。」
サンゴロウの手にあったのは宝の場所が描いてある古い地図。最初はいぶかしげだったケンが、だんだん前のめりになっていくようすをみて、サンゴロウはこういいます。
「いっしょに、くるかい。つれてってやってもいいぜ。」
このようにいわれて、断ることがあるでしょうか……というくらいに、かっこよくわくわくする文句のお誘い。
ふたりが大冒険の末にみつけた宝。その宝をもとに、サンゴロウはずっとあこがれていた海へと旅にでることになります。
船のりサンゴロウの冒険と、記憶をとりもどすまで
第2巻では、サンゴロウはうみねこ島にすむ、船乗りとなっています。愛船マリン号は、太陽と風の力で走る、うみねこ族にしか作れないし、動かせない船です。ケンとわかれ、旅へ出たサンゴロウでしたが、その旅の途中でなにかがあって、過去の記憶をなくてしまっていました。
うみねこ島になじみ、友人で医者のナギヒコに頼まれて危険なキララの海へ薬草をとりにいったり、サンゴ屋のおやじさんに頼まれてにぎやかな市場のある三日月島へサンゴを売りにいったり、ときにはふらりと気ままな航海へでたり。海の上で、さまざまな冒険や出会いを重ねるなかで、やがて、なくした記憶を思い出していきます……。
クールでかっこいいサンゴロウと魅力的な登場人物たち!数々の名言も
その一部を、物語への想像をかきたてる名セリフとともに、ご紹介します。
フルヤ・サンゴロウ
ひとり旅のすきな黒ねこの船乗り。愛船はマリン号。
「おれの運は、おれがきめるんだ。」
ナギヒコ
うみねこ島の病院の院長。サンゴロウの親友。
「おまえねえ、ただしいことばっかりいうなよ。世の中って、そんなにただしくできていないんだよ。」
シーナ
真珠島の白ねこ。サンゴロウのことを追ってくる。
「ほしいものは、じぶんで手にいれる。どんなことをしてもね。」
クルミ
貝がら島の病院の医者。やまねこ族。
「かえりません。もうかえれません。おねがい、つれていって!」
姉妹編も。巻ごとにいろどりの異なるシリーズ
ときに命をおびやかせる冒険にどきどきしたり、どこまでも広い海の孤島でひとしれず営まれている様々な人生にせつなくなったり、1巻ごとにいろどりの異なるストーリーが待っている、「黒ねこサンゴロウ」シリーズ。
姉妹編に「ドルフィン・エクスプレス」(岩崎書店刊)も刊行されていて、こちらにもサンゴロウが登場します! あわせてお楽しみください。