はじめての雪、その年最初の雪は、つもったらあれをしよう、これをしよう、いろんな遊びを考えてしまいます。さあ、この絵本の主人公ピーターはいったいどんな雪遊びをするのでしょうか? 雪がふったら、きっと親子で開きたくなる絵本『ゆきのひ』(エズラ・ジャック・キーツ 作/きじまはじめ 訳)をご紹介します。
うしろのパネルは、アメリカで本のプロモーション用に作成されたもの。今も永く愛されている作品です。
はじめての雪はおどろきの連続
冬のある朝、ピーターが目をさますと、窓のむこうは一面の雪でした。
朝ごはんを食べてから赤いマントを着て、外へでたピーター。まずは、高くつもった雪のなかに足をふみいれてみます。ピーターにとってこれがはじめての雪の日なのでしょうか。一歩一歩、自分が歩いた跡がどうなっているかを確かめながら、歩いていきます。自分の足跡が、へこんで残る、これだけでも心のなかはおどろきでいっぱいですね。
棒をつかって雪に線をひいてみたり、木の枝につもった雪を落としてみたり、ピーターはつぎつぎと新しいことをやってみます。見た目はかたまりになっているけれど、触るとふわっとやわらかい雪。跡をのこしたり、ぱさっと粉になって落ちてきたり、さまざまな表情をみせてくれます。
それからピーターはどんなことをして遊んだと思いますか?
ピーターのどきどきした気持ちがあふれるように伝わってくる、よろこびに満ちた絵本です。本をとじたあとは、すっかりこのピーターという無邪気な男の子が好きになってしまうはず!
雪遊びのヒントもいっぱい!
黒人の男の子を主人公にしたはじめての絵本
作者のエズラ・ジャック・キーツは、1916年、アメリカ・ニューヨーク州のブルックリンで生まれました。35歳の頃から子どもの絵本の挿絵を描いてきたキーツですが、『ゆきのひ』は、40代にはいってから出版した2作目の、自ら文と絵を手がけた作品です。コラージュを駆使するなど独特の手法をつかっているのが特徴です。
この絵本の主人公はピーターという黒人の男の子です。当時、黒人の子を主人公にした絵本がないことに気がついたキーツが、意識してピーターという男の子を誕生させたのです。『ゆきのひ』はその意味でも画期的な作品でした。ブルックリンで多くの黒人の友人がいたキーツにとって、黒人の子どもたちを描くことは、とても自然なことだったのです。
コルデコット賞を受賞するなど、本作で高い評価を受けて以降、キーツは、新しく赤ちゃんを迎えるお兄ちゃんの複雑な気持ちを描いた『ピーターのいす』、口ぶえを一生懸命に練習するようすを描いた『ピーターのくちぶえ』など、ピーターが主人公の作品をいくつも描いています。いずれも、人種や国の垣根を超えた普遍的な子どもの心を、ていねいに描いた作品ばかりです。
雪になりそうな夜、親子でよみたい絵本です。雪がつもったら、ピーターのしている雪遊びをまねしてみたいですね!