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作家が語る「わたしの新刊」

飛行機にのって、はじめてのひとり旅へ! 幼年童話『ペンギンのトビオ』斉藤倫さん&うきまるさんインタビュー

2025.04.15

手紙の差出人、シロクマのポーラさんに会いにいくため、生まれてはじめての飛行機の旅へ! ペンギンの男の子「トビオ」が体験する、ドキドキとワクワクに満ちたはじめての空の旅を描いた幼年童話『ペンギンのトビオ』(嶽まいこ 絵)の著者、斉藤倫さんとうきまるさんにお話を伺いました。

これまでもおふたりで共作を出されていますが、今回ははじめての幼年童話ですね。どのようなやりとりから生まれたお話でしょうか。

うきまる(以下【う】):倫先生に「幼年童話もいつかやりたいね」と言ってもらっていました。

斉藤倫(以下【斉】):ずっとふたりで絵本の「作」をやってきましたが、アイデアやテーマによっては、長めの読み物でないと良さが出ないものもありました。長めのテキストを合作するのは、絵本とはまたべつのむずかしさがありましたが、今回とてもよいものができたと思います。

【う】ふたりで大事にしたことは、余白です。幼年童話は、読者が自分だけのシーンを想像できる余白があるところが良いと感じています。すでに幼年童話を手掛けている倫先生に習って、私もそのリズム感を大事にしたいと思いました。

【斉】幼年童話は、絵との関係性もふくめ、ことばと想像力の入り口になるような特別なものだと考えています。

ペンギンのトビオがはじめてのひとり旅(それも、はじめて空を飛ぶ旅!)にでかける物語ですが、最初の一文は「こわいなあ。でも、ぼくは、いくんだ」! 等身大の主人公、という感じでとてもいいですね。

【う】嶽さんの描いたカバーを見た時に、これは父の目線だ!と思いました。

【斉】うきまるさんにいわれて、旅立つまえにお父さんかお母さんが撮ってあげた記念写真、としか見えなくなったんです。

【う】怖がりながらも挑戦する息子が誇らしい。そんな気持ちが出ていますよね。

【斉】「こわいなあ。でも、ぼくは、行くんだ!」という心情が一枚で伝わるすばらしい絵だと思いました。ちょうど新しい世界にとびこんでいくような、読まれる子どもたちの想いにシンクロすると感じます。

おかあさんが、トビオの旅行かばんに魚をいっぱいつめたり、アナグマさんが飛行機のなかで荷物入れに入っちゃったり、随所にくすりとわらえるユーモアがちりばめられていました。

【う】キャラクターを考える時間は、倫先生ともっとも盛り上がったところです(笑)。こんな人がいたら面白そう!きっとこんな出来事も起こっちゃう!などアイデアがふくらみました。

【斉】それが、絵本の長さではおさまらないな(笑)と感じたいちばんのポイントかもしれません。ふだんは会わないさまざまな人に出会うというのも、旅の本質ですよね。動物に置き換えていますが、そんなことも伝わるとうれしいです。

はじめての飛行場、飛行機の旅の緊張と感動を、トビオといっしょに読者も楽しめるお話ですが、嶽さんのイラストが物語への没入感をさらにかきたてるものになっていて、全体の構成にあたらしさを感じました。物語が本になってみていかがですか?

【う】嶽さんが描くキャラクターは、どの子も本当に可愛らしく、個性豊かです。それぞれがどんな旅をするのか、私自身もとても気になっています。

【斉】ふつう旅の話だと「旅先」がメインだとおもうんです。でも、空港といういろんな見知らぬひとたちがいて、わけのわからない「決まり」や「ルール」がある場所にとびこむ感じのほうが、実は新しい学校とか社会に出ていく子どもたちの気分に近い気がしています。

ちなみに、おふたりは、はじめてひとりで旅をしたときのことを覚えていますか?

【う】3年ほど前に、初めて一人旅をしました。いつもは計画を立て、あれもこれも詰め込むタイプだったので、自分は行動力があるほうだと思っていました。しかし、一人旅ではホテルで考え事をする時間が圧倒的に多くて、自分の行動力は、実は周りの人が作ってくれていたものだったのだと気づきました(笑)。この物語にも、どこか通じるところがありますね。

【斉】子どもの頃に友だちと3人で自転車に乗って遊んでたときのことを思い出します。調子に乗ってどんどん走ってたらまったく見知らぬ街に出てしまった。あのときのなんだかわからないざわざわした感じはいまでも覚えています。

トビオくんは北極をめざしているのかな?と思いきや、まさかの展開! いっぽう、シロクマのポーラさんの旅路がどんなだったのかもとても気になりました。

【う】ポーラさんは体が大きいので、座席が狭くなかったか心配です。

【斉】たしかに(笑)。北極は「北極海」なので「ほっきょくくうこう」があるならどうなってるのかも心配です。「りゅうひょうバス」で近くの大陸まで行ったのかもしれませんね。顔には出さないけどトビオより苦労したんじゃないかなあ。

はじめてでも、そうではなくても、ひとり旅にはいろいろな思い出がありそうですよね。ぜひ多くの方にがんばるトビオくんの旅の物語を読んでいただきたいなと思います! きょうはありがとうございました!

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