毎回ゆかいなことが起こる言葉の森を舞台にした、『へんてこもりにいこうよ』にはじまる、「へんてこもりのはなし」シリーズの第6巻目は『へんてこもりのころがりざか』。シリーズ13年ぶりの続刊となった本書について、作者のたかどのほうこさんにお話を伺いました!
シリーズ1冊目の『へんてこもりにいこうよ』の刊行から実に30年! いよいよ最終巻と伺いました。あらためて、この童話シリーズが生まれた背景について教えてください。
幼年童話のシリーズ「おはなしカーニバル」の1冊を頼まれたのがきっかけです。そこで、幼稚園に通っていたころ私は何が楽しかったろうと思いめぐらせるうち、数人で幼稚園を抜け出して、木立のある原っぱで遊んだよく晴れた平和なひとときのことを思い出しました。葉っぱをかぶったりして、へらへらふざけていただけなのですが、緑と光と笑顔に満ちたその時空間は、思い出すだけで、ぽっと嬉しくなる質のもので、そうだ、あの輝かしい空気の中で––––しかも幼稚園のカリキュラムなどからはずれたところで––––お話を作ろうと思ったのです。
でも、その森で何が起こるかです。そこで、当時よくやっていた動物しりとりを子どもたちにさせ、詰まった子がでたらめな名前をいうとなんとその動物が……という展開を思いつきました。言葉が醸す実物像ということでは、『ピッピ』に出てくる「スプンク」や、『徒然草』の「しろうるり」が念頭にありました。そのどちらも、わくわくする話でしたから、そういう展開は、小さい子たちも喜ぶんじゃないかと思いました。そんなわけで、続編を書くことになったときも、「へんてこもり」を、言葉と関係している森というふうに位置づけることになりました。
へんてこな名前にぴたりとあった、へんてこな見た目の動物たちの絵も、たかどのさんによるものですね。それぞれの場面の絵はどんなふうに描いていくのですか?
お話を書く以上は、当然ですが、情景が頭に浮かんでいるので、それを写し取っていくだけです。ほかの方に頼んだら、その方が読んで思い浮かべた絵になるわけで、それもまた一興ではあるけれど、この本では、私が思い浮かべている場面を再現したいと思い、でしゃばりました。
前作から10年以上あいていますが、『へんてこもりのころがりざか』の構想はずっとあたためられていたのですか?
呆れたことに、全然ありませんでした。ただ、どの巻でも名前だけが出てくる、森を作ったヘンテ・コスタさん、なる人をいつかは登場させたいという思いはあったので、6巻目を書くことになったとき決まっていたこと、あるいは「縛り」でもあったのは、その一点だけでした。どんなふうに登場させようか、そして、今回は、どんな騒ぎを起こそうか、ああでもないこうでもないとしばらく呻吟した結果、ようやくこういうことになりました。
ヘンテ・コスタさんが登場するらしいと伺っていたので、いつ登場するんだろう? まだかな? どんな人なんだろう……? とページをめくる手がどきどきしました。
それは私も同じでした。でも、人物像については、ぼんやりしたイメージはありました。ほら、子どもたちが森に入るとき、必ず、一本の柏の木の横からはいるでしょう? あの柏の木には、顔があるでしょう? 初めからしっかり決めていたわけではないのだけれど、ヘンテ・コスタさんとあの木の顔には、何かしらつながりがありそうだ、というくらいのことは思っていたので、実際に姿を出すときも、自然に、あの顔のイメージになりました。
でも、たとえば、1巻目を書いたとき4歳だった娘は、今や30歳超えの読者になったわけですが、この本を読んで、「えっ、ヘンテ・コスタさんて、おじさんだったの? ずっとおばさんだと思ってた!」と声をあげたので、私のほうが、「えーっ」と、びっくりでした。
このシリーズを読む読者の方にメッセージがあればお願いします。
一応この本が最終巻ということになっていますが、もしかしたら、またいつか続きを作りたくなるかもしれません。そのころは、皆さん、すっかり大きくなってると思いますが、その時は、この年になって読むような本じゃない、なんて思わずに、読んでくださいね!
たかどのほうこ
1955年函館市に生まれる。『へんてこもりにいこうよ』『いたずらおばあさん』で、路傍の石幼少年文学賞、『おともださにナリマ小』『十一月の扉』で産経児童出版文化賞各賞、『わたしたちの帽子』で赤い鳥文学賞、小学館児童出版文化賞、『わたし、パリにいったの』で野間児童文芸賞など受賞多数。作品は『まあちゃんのながいかみ』『すてきなルーちゃん』「つんつくせんせい」シリーズ、「のはらクラブ」シリーズ、『 ルゥルゥおはなしして』など、絵本から長編まで多くある。札幌市在住。