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作家が語る「わたしの新刊」

「ごく個人的な思い」から生まれた、29年ぶりの自作絵本!『わたしのおにんぎょうさん』出久根育さんインタビュー

2023.09.14

お友達のお誕生日祝いに、お母さんが作ってくれたお人形。かわいい包み紙に包まれたそのお人形をしっかりだいてパーティに向かう途中、中からカサカサと音がして……。子どものころの思い出が元になったという『わたしのおにんぎょうさん』について、出久根育さんにお話を伺いました。

本作が生まれたきっかけはなんですか?

ずっと長いこと、作、絵で絵本を作りたいと思いながらも、なかなか実現できずにいたのですが、あるとき偕成社の編集者さんに「そろそろ自作絵本を作ってみては」と背中を押していただき、これまで書き留めていたお話から気に入っているものを選んで手直しをしました。そこから出版にむけて具体的に進めていただいたおかげで、こうして実現できました。

海外生活が長くなり、離れて暮らす両親が歳をとっていくなかで、家族の時間を作品におさめて、両親に喜んでもらえたらいいな、というごく個人的な思いが、このお話を書いたはじまりです。

久々に作・絵を手がけられた絵本ですが、作ってみていかがですか?

幼少期の実際の体験をもとに、幼い私を描いたので、この本を作っている間は、当時のさまざまな感情が思い出されて、切ないようなおかしいような気持ちでした。エッセイなど、日頃もすこしは文章を書きますが、絵本のテキストは、言葉を厳選して、よりシンプルにしなければなりません。その作業がとても楽しかったです。あらためて、絵本作りがとても好きだなあ、という気持ちと、難しさとを実感しました。これからも作っていきたいな、と思います。

出久根さんにも絵本のお人形のような存在がいたのでしょうか?

小学校1年生のとき、仲の良かった友達のお誕生日会によばれて、母が手作りで人形を縫ってくれたのです。母は、昔流行したアメリカのアンディちゃんという、そばかすだらけのキャラクターが好きで、お人形はそれによく似た顔だったと記憶しています。当時、女の子はキキララやキティちゃん、マイメロディーといったサンリオのキャラクターが大好きで、こんな手縫いの人形をプレゼントに持っていく子なんて、ほかにはいませんでしたから、そのときの私は、もうとても憂鬱で…。ですから、お誕生会にその人形を持っていったことまでは覚えているのですが、そのあとどうなったのか、まるで記憶にないのです。お友達は気に入ってくれたのか、そうでなかったのか。

きっとそのお人形はもう存在しないでしょうけれど、今はとても会いたいです。

最後に読者にメッセージをお願いします!

こんにちは。とてもひさしぶりに自作の絵本を作りました。これまでも絵本を作ることに携わってきましたが、やっぱり、絵本を作る人、作家になりたいな、と思ったので、それならばとお話も自分で書くことにしました。こどもの頃に夢中になった絵本の世界が、私を育ててくれました。絵本作家というのは、とても素晴らしくて、責任ある仕事だと感じています。まだまだ本当に未熟ですが、いつか一冊でも、みなさんの心に響く作品が生み出せたらいいな、と思っています。その最初の第一歩、「わたしのおにんぎょうさん」を楽しんでいただけましたらとってもうれしいです。

ありがとうございました。


出久根 育(でくね いく)
1969年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業。『あめふらし』で2003年BIB(ブラチスラバ世界絵本原画展)グランプリ、『マーシャと白い鳥』で2006年日本絵本賞大賞を受賞。絵本に『十二の月たち』『おふとんのくにのこびとたち』『おふろ』『もりのおとぶくろ』(産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞)『ペンキや』『ワニ』など。読み物の挿絵に『みどりのスキップ』『街角には物語が…』『ルチアさん』、エッセイ集に『チェコの十二ヶ月ーおとぎの国に暮らすー』など。チェコでも、エルベン生誕200周年記念に出された『Živá voda』『Zachráněné vánoce』など多数の本を手がける。2022年西ボヘミア大学・ラジスラフ・ストナル・デザイン・芸術学部シンポジウムにて、イジー・トルンカ賞受賞。2002年よりチェコ在住。

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