『ごあいさつあそび』『いないいないばああそび』など、あかちゃん絵本の定番として知られるロングセラー絵本シリーズ「あかちゃんのあそびえほん」の15巻目は『てあらいできるかな』。ちょっと面倒にも思ってしまう「手洗い」の仕方を、楽しく身につけるのにぴったりの絵本となっています。
15巻目、タイムリーなテーマとなりましたが、この絵本ができたきっかけはなんですか?
昔、ヨーロッパで手を洗うという習慣がなかったばかりに多くの人が感染症で亡くなったという話を聞きました。今、世界中がコロナで大変ですが、こういう時こそ手洗いの大切さを教えるチャンスでもあると思い、この本を作ろうと思いました。
どれくらいの制作期間でしたか?
多分、3ヶ月くらいだと思います。このシリーズの中では最速ではないかと思います。この1冊に全ての時間を注ぎ込んで生まれました。
こだわったことはありますか?
しかけはすぐに浮かんだのですが、手が羽のピィちゃんの役割をどうするか? ゆびをいっぽんいっぽん洗うのをどう表現するか、など色々悩んだ末にこの形になりました。
今回もみごとなしかけでめくるのが楽しい絵本でした!「あかちゃんのあそびえほん」シリーズは、しかけと絵、ストーリーと、考えることがとても多い絵本ですが、制作はどのようにすすめるのでしょうか?
まず頭で考えたストーリーとしかけを紙に描いて絵コンテを作ります。それをもとに紙キレで小さなしかけ絵本を作ってみます。
次は原寸の大きさでしかけのラフを作ります。その間に何度も改良を加えます。ダミーラフが完成したら、そのラフをもとに鉛筆で下絵を描きます。その下絵で本当にしかけが上手くできているか、コピーして製本して作ってみます。上手く合わないところは直します。
その下絵をもとに線画を描き上げます。またコピーをとり、本当にしかけが合っているか製本して作ってみます。合わないところはまた直します。線画が完成したら、次は色です。色は線画とは別の紙に塗っていきます。線画からはみださないよう、紙をしっかり合わせます。色はパステルを指でとりケント紙につけていくので、1冊描くと右手の指紋はなくなり、指先が痛くなります。
おうち時間が増えて、絵本を読む方も増えているようです。きむらさんはおうち時間をどのように過ごしていましたか?
元々、作家や画家などは、おうち時間で仕事をしている職業。だから他人と会わず思いっきり仕事ができました。
まだまだ「あかちゃんのあそびえほん」シリーズはつづきますか?
はい。35周年(2023年)に向けて、まだまだ新作を作る予定です。あかちゃんの世界は小さいけど、いくらでも新しいプランを生み出せるはず。そう思って挑戦していきます。
次回はどんなテーマを考えていますか?
秘密です。でも、“ありがとう”“ごめんなさい”“どうぞ”など、知って欲しい言葉はやりたいと思っています。秘密ですよ。
きむらゆういち
東京に生まれる。多摩美術大学卒業。造形教育の指導、テレビ幼児番組のブレーンなどを経て、現在、絵本・童話の創作、作詞、戯曲・コミックの原作、小説の執筆、講師をつとめるなど、幅広く活躍。『あらしのよるに』で、産経児童出版文化賞・講談社出版文化賞絵本賞受賞、斎田喬戯曲賞受賞。『オオカミのおうさま』で、日本絵本賞受賞。おもな作品に、「あかちゃんのあそびえほん」シリーズ、「木村裕一・しかけ絵本」シリーズ、「おはなしゲーム絵本」シリーズ、「2才からのあそびえほん」シリーズなどがある。ゆうゆう絵本講座主催。