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作家が語る「わたしの新刊」

可能性は無限大! 夢いっぱいの絵本『おうさまのこどもたち』の作者三浦太郎さんにインタビュー

2019.10.18

ちいさなおうさま』『おおきな おひめさま』につづく、待望の3作目、『おうさまのこどもたち』。王様とお姫様のあいだにうまれた10人のかわいい赤ちゃんがりっぱに成長して、それぞれの道を決めるお話です。この絵本にこめた想いについて、三浦太郎さんにお話をうかがいました。


––––『ちいさなおうさま』『おおきなおひめさま』につづく3巻目の登場ですね! 子どもたちが活躍する3冊目の構想は、以前からあったのでしょうか?

『ちいさなおうさま』の制作時に、ぼんやりとですが、構想はありました。

『おおきなおひめさま』はなぜ大きなお姫様になったのかというお話、『おうさまのこどもたち』は王位継承の話で、のんびり屋の10番目の子どもが次の王様になる。と、ここまでは決めていたので、『ちいさなおうさま』の中で、10番目の子どもはお城の中でお昼寝をしています。

 しかし、お姫様の話はすぐにできたのですが、子どもたちの話はなかなか落ち着くエンディングを決められずにいました。10人を、1人ずつ見開きで見せたいという考えが最初からあって、残るページは5見開きしかありませんから、複雑なお話の展開はできません。

 また、この三部作に流れる幸せなストーリーは、絶対にハッピーエンドにしたいと思っていました。そうあれこれ考えているうちに、制作の手が止まっていました。

『ちいさなおうさま』を作っていた時、娘はまだ保育園でしたが、今は中学三年生。将来のことも、小さいころとはちがい、かなり具体的で、趣味や性格、才能なども目に見えて出てきました。『おうさまのこどもたち』を作るなら今しかないだろう、とようやく重い腰を上げたのです。

色校正をする三浦太郎さん

––––アイドル歌手やアーティストなど、子どもたちがあこがれる職業が現代風で、身近に感じられますね! これはどのように選んだのですか?

 最初は、小学生がなりたい職業を調べたりしました。次に、絵に描いたらおもしろそうな職業をピックアップして。

 カフェなんかも描いてみたかったのですが、お店屋さんが多くなってしまうので、バランスを見ながら選びました。

 あとは、自分の中での理由づけですが、お母さん(おおきなおひめさま)がフラワーランドから嫁いだ設定なので、1番目の子はお母さんの影響を受けているということでお花屋さんにしよう! と決めていきました。

 こうやって今考えると、全部自分がやってみたい職業なんでしょうね。

メインの図柄は、下絵を描いた水色の紙を切りぬいて台紙に貼り、スキャンしてパソコン上で色をつけるそうです。ものすごくこまかい作業!

––––ちなみに、三浦さんの、小さいころの夢はなんでしたか?

 そうですね、仮面ライダー、ウルトラマン、新幹線の運転手。時代でしょうか、王道を行ってます。

 その後は、絵が好きだったので画家でしたが、長男で実家の書店を継ぐものだと思いこんで育ってきたので、周りの人が「太郎ちゃんは絵が上手だから、将来は画家さんかな。画家なら、本屋さんをしながらできるから」といった具合に刷りこまれたイメージなのかもしれません。

––––お子さんと将来の夢についてお話しされることはありますか。

 うちの娘のなりたい職業は、ユーチューバーなんです。ここにもいた! とあきれていますが、僕も今中学生だったらやっぱりユーチューバーにあこがれているだろうから、どんどん興味を持ったものをやれ、と応援しています。(笑)

––––見開きごとにさまざまな遊びや工夫がありますが、とくにこだわったページはありますか。

 とくに一つと決められないほど、こだわり満載です。

 でも、いちばん難しかったのはアーティストでしょうか。なんでもありだから、よけいに決められない。結果、自分が影響を受けた作家たちを天国から呼び起こしました(笑)。

 とくに、アンディー・ウォーホルは高校のころ大好きで、中でもバスキアとの共作はしびれていました。この時のポスターがボクシングのパロディーなので、絵の中でもファミコンでボクシングをして遊んでいるのです。

––––6番目の子どもの「ほいくし」のページ、壁にかけられたのびのびとした作品がとても気になるのですが、どなたの絵なのか、もしよかったら教えてください!

 これらは、保育園時代の娘の絵です。大切に保存していたものを出してきて、ひととおり見返しました。娘は横で見ていて、こんなの描いたっけといってましたが、僕からすると昨日の出来事のような話なので、「この絵は海に行った時に~」と僕が娘に説明しましたね。

 

––––この本を通して、子どもたちに伝えたいことはありますか。

 まずは、子どもたちはなんにでもなれる可能性を持っているということ。それはもう無限大です! そして、性別や肌の色、ハンディキャップも関係なく、好きな仕事ができる時代です。また、そういった社会でなければならないと思っています。

 そして、やりたいことが見つからない子、自分に自信がない子もいるでしょう。人間は、役目を与えられることで、その才能に目覚めることもたくさんあります。いろんなことを経験したり、新しい世界に飛びこみましょう。また、身近な人にアドバイスしてもらうのもいいですね。きっと自分では気づいていない才能に出会えるはずです。

 どんな親でも、子どもの才能を伸ばしたいと思っていますし、その成長に期待しています。すべての子どもたちの輝く未来を応援してあげたいですね。

––––ありがとうございました!


三浦太郎
1968年愛知県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業。 ボローニャ国際絵本原画展入選。 『ちいさなおうさま』 (偕成社)で第58回産経児童出版文化賞美術賞。おもな作品に、『くっついた 』 (こぐま社)『バスがきました』(童心社)『りんごがコロコロコロリンコ』(講談社)『CO2のりものずかん』 (ほるぷ出版)『おとうさんのかさ』(のら書店) はたらくくるま『よいしょ』『とどくかな』『まかせとけ』 (偕成社)などがある。

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