icon_twitter_01 icon_facebook_01 icon_youtube_01 icon_hatena_01 icon_line_01 icon_pocket_01 icon_arrow_01_r icon-close_01

子育てと絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第34回

子どもがまっすぐ歩かず、どこへ行くにも時間がかかります!

2024.04.25

目的地があるときや、時間までに行かなければならないときに、子どもがまっすぐ歩いてくれないと、本当に困ってしまいますね。

保育園に徒歩で来るときに時間がかかりすぎて、園に到着する頃にはお父さんやお母さん、おうちの方がヘトヘトに疲れてしまうことも。

「もう! 本当に寄り道ばかりなんです!」

「早くしないと、仕事におくれちゃうでしょ!」

こんなふうに、ちょっと怒りながら登園してくる場面も時折見ます。

遊ばない、寄り道しないと最初から決めるのは、成長の機会を奪ってしまうかも。

道を歩くということは、子どもたちにとって不思議で楽しいことがいっぱいなのだと思います。

保育園では、1歳や2歳の子たちと散歩に行くときは、たんぼのあぜ道や車が来ない遊歩道を歩いたり、歩くと砂利の音がする神社の砂利道を歩いたりしていました。

途中で水たまりをみつけると、迷わず入る子がいれば、おとなの顔色をうかがってにやっと笑ってから入る子もいます。新しいくつを絶対にぬらさないぞ!と遠回りする子も、「水たまりには入らない」というお父さんやお母さんが言ったことを守る子もいます。

わたしは、水たまりをみつけたとき、目の前のこの子はどうするかな?と、見守ってみます。

みなさんも、くつがぬれて、くつしたまで染みてしまう感じ、覚えていませんか? ジャンプしたら服までぬれて、泣いてしまったという記憶がある人もいるのでは?

そういう体験が大事なのだと思います。

最初から「遊ばない」「寄り道しない」と決めてしまっては、子どもが成長するチャンスを奪っていることになりかねません。

地面が近い子どもにとって、道にあるものは好奇心をくすぐるものばかり。

わたしが若い保育士だったころに、年少組の子どもたちと遠足にでかけたときのことです。車があまり来ない細い道をのんびり歩いていたら、塀のかげにとかげがじっとしているところに遭遇しました。

子どもたちは「なんだろう」という顔をして立ちどまります。わたしは子どもにとかげを見せたくなり、「ちょっと待ってて」と荷物を道におろし、逃げようとするとかげをつかまえるために奮闘。運よく(とかげにとっては運悪く)つかまえたので、その場で観察しました。

家に帰った子どもたちは、遠足の話をせず「せんせいが とかげを つかまえた!」という報告ばかりしていたとききました。反省しながらも、子どもたちの記憶に残る時間だったのだなあとうれしく思ったことがありました。

子どもたちは地面が近いので、アリもダンゴムシも、小さな花も、みんな好奇心をくすぐるのです。

時間を作って、子どもとゆっくり歩くだけの散歩にでかけたり、ゆとりを持って家を出発したりできるといいですね。子どもにとって、おうちの方と道を歩いているときは、安心できる時間なのです。

日頃、できないこともあるかもしれませんが、寄り道していい日を作ると子どもの気持ちがわかるかもしれません。 それに、あっという間に寄り道なんかしなくなってしまいます。

ただし、車の通る道は危険です。命にかかわる危険があるときは、どんなときも、きちんとダメなことを伝える必要があります。車が通る道ではしっかり子どもの手をつなぎ、車の色や空の色、風のようすなどを会話にして楽しむのもいいかもしれません。

寄り道やみちくさを楽しむ絵本!

『みちくさしようよ』(はたこうしろう、 奥山英治・作、ほるぷ出版)

きょうだいがみちくさをするのだけれど、そのみちくさの中に、情報がたくさん詰めこまれている。あおむしやかたつむり、ありの話に、小さい子たちも興味しんしん。今は「みちくさしないで帰ってくるんだよ」と言う必要もなくなっているくらい、子どもたちの生活が忙しくなっている。でも、まだまだ子どもたちがみちくさをして楽しめることがあるのだと気づかせてくれる作品。親子でみちくさできたら、楽しいですね!

『みちくさ』(さとうわきこ・作、偕成社)

男の子がみちくさをする。出てくる場面は、ありえないようなものばかりなのだけど、ユーモアにあふれていて、何度も見たくなる。子どもたちは、美容室のかぼちゃが気になるようで、ページをめくると「かぼちゃだ!」と指をさす。鳥居がすもうを、電車がボクシングを、山がそうめんを!! 子どもたちにとってのみちくさも、ありえない発見に満ちているのではないかと思う。最後はたくさんの月が「カエレー」と教えてくれて、ちゃんと家に帰ってくるので、安心して見ることができる。さとうわきこさんの遺作となったこの絵本、たくさんの人に手にとってもらいたい。


安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。

この記事に出てきた本

バックナンバー

今日の1さつ

2024.12.21

子供に書店で選ばせたらこの本をもってきました。見た目の色づかいもかわいく、バーバパパの人柄もわかりやすく思いやりの気持ちを育てることができると思いました。(4歳・ご家族より)

new!新しい記事を読む