おやつについては、それぞれの家庭でさまざまな考え方があって、正解はないと思います。
「3歳まではチョコレートを食べさせたくない」とか「白砂糖は体によくないのではないか」とか「虫歯が心配とか」とか。悩んでいるおうちの方によく出会います。「お兄ちゃんやお姉ちゃんがいると、気にしていられないよね」と、はやくからチョコレートやアイスクリームを食べはじめる子も。
スーパーやコンビニに行くと、おやつのバリエーションがとにかくすごい! おとなでもわくわくするようなキャッチコピーがあり、色やデザインもすてき。子どもが欲しくなるのはあたりまえ。かといって、なんでも好きに食べさせていいわけではないのが、おやつです。
小さい子どもにとっておやつは、補食。食事で取り切れないエネルギーをとる。
小さい子どもは胃が小さいので、おやつでの補食は大事です。甘いものはお楽しみのひとつとして、食事では取り切れない栄養をプラスする必要があります。
食事のひとつであるという考えから、わたしが園長をつとめている保育園では、おやつはできるかぎり、手作りにしてもらっています。おやつのメニューがおにぎりやお好み焼きの日もあります。
意外と人気なのは、「五平餅」や「スイートポテト」。「寒天とくだものの缶詰で作るゼリー」も大好きなメニューです。五平餅は、ごはんに甘いみそを塗って焼いただけですが、子どもたちからの「おかわり!」がとまりません。ケーキのクリームより、こっちの方が好きという子もいます。
保育園では、栄養士さんがカロリー計算をしています。わたしも給食検討会に参加させてもらい、おやつの内容について、子どもたちが楽しみにできるように一緒に考えています。
保育園のようすを書きましたが、おうちでは、「お店にならんでいるものは与えない」としてしまうと、ストレスや葛藤を生むことにもなると思います。数を決めてお店で子どもと一緒に選んだり、おとなが2種類のおかしを見せて、「どっちにする?」と子どもに決めさせるなど、いろいろな方法を試してみてください。
「おやつの時間」を作って、子どもと一緒におとなも座って食べるのが大事。
「おやつの時間」を作って、おやつをお皿に入れ、お茶や牛乳、ジュースを用意しておとなも一緒に座って楽しく食べる! これが一番大事なのかなと思います。そうすれば、おうちの方にとっても、楽しい時間になるはず。保育士も子どものそばに一緒に座って、おやつの時間を過ごすことを大事にしています。おやつの中身も悩むより、楽しく考えられるようになるといいですね。
小さい子は、あめやりんごをのどにつまらせてしまうと、とても危険です。なので、子どもがおとなしくしているからと、テレビを見ながらおやつを食べさせるというのはあまりおすすめできません。とりかえしがつかない事故が起きないよう、おとなも一緒に見守り、おやつが子どもたちにとって楽しい時間になるようにするのが何より大切ですね。
おやつの絵本と一緒に、歯みがきの絵本も読んでみましょう!
絵本の中でおやつを楽しむというのもいいかも! おいしいおかしがでてくる絵本はたくさんあります。そして、歯みがきも欠かせない。歯みがきをテーマにした絵本も紹介します。
『はらぺこあおむし』(エリック・カール・作、もりひさし・訳、偕成社)
おそらく、だれもが知っている絵本。保育園には毎年毎年、新しい子が入園してきますが、どの子どもも大好きな絵本です。絵本の中で、あおむしは食べて大きくなっていきます。大きくなることは、子どもたちのあこがれ。でも、あおむしは、チョコレートケーキ、アイスクリームなどたくさんのものを食べて、おなかが痛くなってしまいます。小さく描かれたあおむしが痛がっている表情を、子どもたちは見逃しません。「おいしい葉っぱを食べることも大事」と伝えてくれます。
『おたんじょうび』(まついのりこ・作、偕成社)
わかりやすい絵で、たくさんのおかしが登場します。車でおかしが運ばれていくというのも子どもたちが好きなポイント! 0歳の子でも、指をさして喜びます。「おいしそうだね」「食べたいね」「どんな味だろうね」と子どもに問いかけながら読んでいます。「きょうのおやつはこれ、ぶどうにしよう」「ビスケット食べたいね」と、文字がないだけに、会話がひろがります。たんじょうびの特別な日に、子どもたちが大好きなおやつを用意するというものいいかも。孫の3歳の誕生日に、こっそりチョコレートを用意したら飛び上がって喜んだので、チョコレートひとつでこんなにうれしいなんて、うらやましいくらいでした。
『がんばれ はぶらしハーマン』(きむらゆういち・作、田中四郎・絵、偕成社)
歯をみがかないと虫歯になるというのは、実は子どもにはわかりにくい。お母さんがちゃんと気にしていても虫歯になってしまう子もいるし、ほとんどみがかないのに虫歯にならない子もいるのです。でも、歯みがきは習慣として身につけると良いものです。この絵本はしかけにもなっていて、シンプルに「歯をみがいたほうがいい」ということがわかると思います。「ムッシー」「ハーマン」というネーミングもおもしろい!
安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。