親子で料理っていいですね。
保育園でも2歳になると、おままごとをはじめます。おままごと遊びをする手つきを見ていると、おうちの人が料理するところをよく見ているなあと感心することも!
「ごはんまだー?」「ちょっとまってて! てれび、みてらっしゃい!」など、子どもの言葉をきくと、家庭の雰囲気がうかがえて、その口調に笑ってしまうこともあります。
園でも、2歳から子どもたちが食に関心を持てるよう実践している。
食育は大事なこととして、園でも食育の年間計画を立てて、子どもたちが食に関心をもてるようにと実践しています。2歳児クラスでも、スイートポテトを作ったり、おにぎりを作ったり。ひなまつりの頃には、米粉を使った「おこしもの」を子どもたちと作ったりしています(「おこしもの」はわたしが住む愛知県で桃の節句に供えられる郷土菓子です)。
手軽に食べることができる市販のお弁当や、子どもの興味をそそるおかしがたくさんある世の中。それぞれのおうちで取り入れていると思いますが、それでも小さな子が料理に関心を持つのは、「食」を大事に考える機会を、おとなに与えてくれているということなのかもしれないですね。
2歳くらいの子は、うまくできなくてもなんでもやりたがって、ときには困ることもあります。
でも、せっかく興味をもったのですから、汚すのも、失敗するのも、途中で飽きるのも覚悟で、ぜひ一緒に作ってみてください。お母さん、お父さんと一緒に料理に挑戦する時間が、子どもにとってはとてもすてきな時間だと思います。
台所で、2歳ができることはいろいろある!
買い物から一緒に行くっていうのもいいですね。料理の素材がわかるのも大事なことかなと思います。
切り身の魚を買ってきて、ちょっと塩をふってみる。ハンバーグの具をこねてみる。ぎょうざの皮にチーズを巻くというのも、かんたんでおすすめです。
食べものに関する絵本はたくさんあります。いろいろなものがありすぎて、選ぶのを悩むぐらいです! 絵本にでてくるごちそうや、おかしを見て、「おいしそうだね。作ってみようかな。一緒に作る?」と声をかけたら、大喜びで手伝ってくれるはず。
『ノンタンのたんじょうび』(キヨノサチコ・作、偕成社)
表紙をひらくとクッキーの作り方がのっている。そこはちょっと飛ばしてお話を読む。ノンタンに内緒で、たんじょうびの準備をするなかまたち。「ないしょ、ないしょ。ノンタンにはないしょ!」と言われ、ノンタンはしょんぼり。めかくしされたノンタンが目をあけると「おたんじょうびおめでとう!」。そこには、ノンタンのクッキーがいっぱい! 「みんなで作っていたんだね」と見ていた子どもたちもうれしそう。作り方を見ながら、保育園でも何度もクッキーを作りました。小さい子でも型抜きは喜んでやってくれます。
『ばばばあちゃんのなぞなぞりょうりえほん むしぱんのまき』(さとうわきこ・作、佐々木志乃・協力、福音館書店)
子どもたちとむしぱんを作ることにしたばばばあちゃん。ばばばあちゃんの料理は、なぞなぞからはじまります。子どもたちに「作りたい!」っていう気持ちをおこさせるばばばあちゃんの話し方には、なるほどと思う。わたしは作者のさとうわきこさんと長年のお友だちなのですが、わきこさんはこの料理絵本シリーズを作るのに、協力者の佐々木志乃さんとともにいろいろな料理を作っていました。特製ダンゴムシパン、ぜひ作ってみてください!
『おむすびころりんはっけよい!』(森くま堂・作、ひろかわさえこ・絵、偕成社)
あるところに「さんかくおむすびの くに」と「まんまるおむすびの くに」があって、2つの国は、いがみあっている。そして戦をすることに。でも戦を知らないおむすびたちは「うったり、おとしたり、たおしたり」するのを「うっちゃって、つきおとして、よりたおす」相撲のことだと考える。そして、さんかくとのさまと、まんまるとのさまが相撲をとることに。なんて平和な戦。とのさま自身が相撲をするっていうのもすてき。この本を読んだあと、おにぎりを作ろうとすると「さんかくとまるにして!」とリクエストが。子どもたちと作ってみたらきっと楽しい。
『おにぎりをつくる』(高山なおみ・文、長野陽一・写真、ブロンズ新社)
著者はおにぎりを「いのち玉」と語っています。おにぎりを自分で作ることができたら、だれかに作ってあげることもできる。この本では、おにぎりの作り方がお米をとぐところから、すべて写真で紹介されています。子どもたちの目線で写真が撮られていて、熱いごはんをお茶碗で転がしたり、3本の指にお塩をつけたり。おとなと子どもが一緒に作っていくので、それも楽しい。ちょっと大きくなったら、自分で写真を見ながら作ることができるようになっている絵本です。
『ボクがつくった世界のおやつどうぞ!』(平野恵理子・作、偕成社)
中国やタイやアメリカなど、10か国で作られているおやつが紹介されている。紹介だけではなく、作り方が書いてあるので、おとなのわたしも興味しんしん。こんな風に、世界にいろんな人がいることを知るのもいいなあと思う。材料だけでなく、道具も絵で描かれているので、作れそうな気持ちになる。タイの焼きバナナならすぐにでもできそうだし、ポップコーンもおもしろそう。モロッコのオレンジスライスもおいしそう。メキシコのグアカモーレも気になるけれど……日本のおやつ、冷やし白玉を作ってみるのがおすすめ! 白玉は、保育園のおやつにもよく登場します。缶づめのみかんと一緒もいいし、きなこをまぶしたら栄養もある。まるめて、真ん中を押すっていうのも子どもたちには楽しいと思います。小さい子が食べるときは、のどにつまらせないよう、十分に気をつけてくださいね!
安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。