自治体の健診などで「同年齢の子どもがいるところへでかけるといいですよ」と紹介されて、地域の子育て支援センターや児童館へ足を運ぶおうちの方、いらっしゃると思います。でも、アドバイスを受けて行ったものの、子どもがひとりで遊んでいて「これでいいの?」と不安に思う人は多くいます。
1、2歳の子どもたちは「ひとり遊び」が基本
例えば、児童館などでほかの子どもたちが一緒に遊んでいるように見えても、1、2歳の子たちは、基本、「ひとり遊び」です。
同じ遊びをしていても「並行(平行)遊び」といって、それぞれの世界で遊んでいることが多いのが、この時期の子どもたちです。その、じぶんの遊びの世界をじゃまされると、我慢ができなくて怒って物を投げたり、ときには友だちをたたいたり、かみついたり。
保育園では、1歳児クラスの「ひっかき」と「かみつき」は、先生たちの研修のテーマになるくらい、現場の悩みでもあります。ひとり遊びをすることや、それをじゃまされて怒ってしまうことは、子どもたちがかならず通る道であるような気がするので、おとなたちが人と比べず、ゆったり関われるといいですね。
この時期の子どもたちにとって、ひとり遊びはとても意味があること。なるべくじゃませず、見守ってあげられるといいなと思います。
どんなに小さい子でも、ちゃんとまわりを見ている!
子どもたちはどんなに小さくても、まわりで起きていることに敏感で、驚くほどの観察力があります。児童館などでは、友だちがしていることをちゃんと見ていて、最初の日はひとりで遊んでいたのに、次回来たときには、前にほかの子が使っていたおもちゃを取りだして遊んでいる姿を見たことも。友だちのことをよーく見ていたんだなと驚くことがあります。
ひとりで遊んでいる、ということは、きっとそこが居心地のいい場所なのでしょうね。だとしたら、子育て支援センターや児童館へ連れていく意味はあります。
わたしは児童センターに長い間勤めていたので、就園前の親子をたくさん見てきました。親たちのサークルや子どもと遊ぶサークルなど、さまざまなことに関わってきましたが、子育て支援センターや児童館は、子どもたちよりお母さんたちの居場所になっていると思うことがよくありました。お母さん同士で悩みを打ちあける場になって、学校へ行ってからも相談できるママ友ができましたときいたこともあります。
でも、たくさん人がいて、慣れない騒音を子どもが嫌がったり、お母さん自身がつらいと思うなら無理して連れていくことはないと思います。少人数で遊べる場所や戸外の公園などへでかけるのもいいですね。
絵本の中で、「友だちと遊ぶ」ということに触れていくのはおすすめ!
子どもたちが友だちと一緒に同じ目的で遊べるようになるのは、じつは5歳を過ぎるころ。
だから、友だちを意識して一緒に遊ぶのはまだまだ先のことなのだけれど、絵本の中では、子どもだけでなく、動物や野菜まで一緒に遊んでいます! そんな絵本にたくさん触れていくのは、おすすめです。
絵本の中では、けんかをしたり、いじわるしたりされたり、困った行動もあったりするのですが、そこに友だちや、友だちになるかもしれないだれかがいると、楽しくてほかほかあったかい空気が流れていきます。
『だるまさんと』(かがくいひろし 作、ブロンズ新社)
シリーズのなかでも、くだものが登場する絵本です。いちごさんとあいさつしたり、ばななさんとおしりを「ぽにん」とくっつけたり。この絵本を見た子は、友だち同士で遊びだし、親子で読めば、最後にぎゅっと抱きしめたくなる。だれかがそこにいて、一緒だと楽しいよ、とだるまさんたちが教えてくれます。
『ノンタンぶらんこのせて』(キヨノサチコ 作・絵、偕成社)
ノンタンはなかなか友だちにぶらんこをゆずれません。「かたあしのりするんだもん」「スピードのりするんだもん」とゆずらない理由を言うノンタンは、なかなかすごい! でも、みんなが怒ってしまうと、じぶんで考えて「かわるよ かわるよ。10までかぞえたら、じゅんばんかわるよ」と言う。この絵本には、おとながでてこないところがいい。子どもたちにまかせたら、ちゃんと解決できたりするものです。
『たろうのともだち』(村山桂子 作、堀内誠一 絵、福音館書店)
こおろぎが「ひとりぼっちじゃ つまんないなあ」と友だちをさがしにいく。ひよこ、ねこ、いぬと出会い、順番に「けらい」になって歩いていく……。少し長いお話ですが、くりかえしの構成や、動物の鳴き声がでてくるので、2歳の子もこのお話が好き。たろうだけが「けらいなんて、ぼく いやだ!」ときっぱり言うと、みんな友だちになります。だれかにしたがうのではなく、みんなで友だちになったら楽しいということが伝わる1冊です。
『ともだちになっちゃった』(ますだゆうこ 文、にごまりこ 絵、そうえん社)
コロが散歩にでかけたら、ボールやはっぱ、いろんなものがとんでくる。それが、てんとうむしやかえるに変身! 「みーんな とんできて ともだちに なっちゃった」というお話。ロボットまで友だちになっちゃうところがおもしろい。どんなものにも声をかける子どもたちは、違和感なくこのお話を受け入れる。最後のページには楽譜もついていて、歌いながら読んだら楽しいことまちがいない!
『ね、ぼくのともだちになって!』(エリック・カール 作、偕成社)
ねずみが「ね、ぼくのともだちになって!」といろんな動物のしっぽにむかって話しかける。でも、大きな動物たちはなにも答えない。にらんでいる表情の動物もいるけれど、動物たちの顔がとてもすてき。登場する動物は、うま、わに、ライオン……へびまで数えると12種類! 最後は女の子のねずみが「ええ、いいわ!」と言ってくれて、木のあなの中でなかよくすごす。途中、あおむしが描かれているのを、子どもたちは見逃しません!
『あおくんときいろちゃん』(レオ・レオ二 作、藤田圭雄 訳、至光社)
あおくんときいろちゃんはいっしょに遊びたくて、おたがいをさがしている。ばったり会えたら、うれしくて、なんとみどりになってしまう。遊んでうちに帰ると、「この みどりのこ うちの あおくんじゃないよ」「この みどりのこ うちの きいろちゃんじゃないよ」とぱぱとままに言われてしまう。悲しくて泣いたら、元のあおくんときいろいちゃんに。友だちと一緒の楽しさや、帰ることができる家がある安心感が伝わる気がします。
『きれいなはこ』(せなけいこ 作、福音館書店)
きれいなはこをみつけたねこちゃんとわんちゃん。ふたりともじぶんが先にみつけたとゆずらない。きーっとねこちゃんがひっかいて、がぶりとわんちゃんがかみつく。すると中から「けんか するのは だれだー!」とおばけがでてきて……。けんかばかりしている子は神妙な顔でこのお話を見る。けんかがなくなるわけではないけど、なぜか子どもたちはくりかえし見ています。仲良くすることが大事だと教訓を伝える絵本でないところがいいのかもしれません。
『ともだちや』(内田麟太郎 作、降矢なな 絵、偕成社)
キツネが「ともだちは いりませんか」と歩いていって、オオカミと出会う。サングラスにちょうちんを持ち、うきわに入る「ともだちや」のキツネの姿がまたいい。オオカミと遊んだキツネが「まだ、おだいを いただいていないのですが……」と言うと、「おだいだって!」と画面いっぱいに広がる顔でオオカミが言う。この顔はなんど見てもすごい! 最後、キツネは友だちができてうれしそうに帰っていきます。
安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。