たぬきのたぬはらさんは、図書館の司書さんです。あるとき、遠くに住んでいてなかなか図書館に来られないねずみに出会い、すてきなアイデアを思いつきます! それは……? 今回はユニークであたたかな絵本、『たぬはらさんのどこでもとしょかん』(はやしますみ 作)をご紹介します。

動物たちのリクエストにこたえ、いろんな移動図書館に変身!
たくさんの本がある図書館で働く、たぬきの司書のたぬはらさん。ある日、図書館が閉まる時間に、遠くに住むというねずみがやってきました。
「どれだけ はやおきしてきても、としょかんが あいてる じかんには まにあわないや。
ぼく、このままずっと ほんを よむことが できないのかも」
それを聞いて、「そうだ!」とあることを思いついたたぬはらさん。次の日、図書館に来られない動物たちのことを考えながら、葉っぱを1枚1枚集めました。そして、それを全部あたまにのせて、ポン! と、おなかをたたくと……たぬはらさんが、本がいっぱい乗ったワゴンになりました! 集めた葉っぱは全部、本に変わっています。どこにでも行ける、どこでもとしょかん。移動図書館です!
その日は1日、のはらがみんなの図書館。ねずみやとかげや虫たちが、心ゆくまで本を楽しみました。
それをきっかけに、たぬはらさんはいろんな移動図書館に変身し、池のなかや雲の上へと大活躍! そして、あるとき、人間たちが自分の移動図書館を見たらどうするかな? と考えて……。
はやしますみさんの経験から生まれた、お楽しみ要素もいっぱいの一冊
作者のはやしますみさんは、2021年、滋賀県近江八幡市立図書館の移動図書館車「はちっこぶっく号」のラッピングイラストを手がけました。そのお披露目会をしたとき、保育園や幼稚園にバスが乗り入れ、扉がひらいて図書館が現れる様子を見て、「移動図書館車は、まるでお話をはこぶ舞台のよう」と感じたといいます。その経験が、本作が生まれるきっかけになりました。
本作には、楽しいしかけもたくさんあります。実は作中に登場する絵本は、(どれも許可をいただいて)実在の絵本の表紙を模写したもの! 絵本好きの方なら、「あ、この表紙は!」とピンとくるかもしれません。池のなかに行くときは『うみの100かいだてのいえ』を入れるなど、ラインナップも行き先に合わせられており、たぬはらさんの心くばりがうかがえます。本の後ろ見返し(裏表紙の前のページ)には、たぬはらさんが作った図書館だよりが載っていて、そこでそれぞれの絵本が紹介されています。

また、作中でたぬはらさんが歌う「どこでもとしょかんのうた」の楽譜が、本の前見返し(表紙の次のページ)に掲載され、一緒に歌って楽しむことができます。この歌は、実際にこちらで聴くことができ、本にはQRコードも掲載されています。

工夫がいっぱいの、ユニークであたたかな絵本です。ぜひあなたも、たぬはらさんと出会ってみてください!