トイレの花子さんや、不幸の手紙など、いつの時代もさまざま憶測が絶えない都市伝説。学校や街角など、身近な場所で起きたという不思議な出来事の話には、その通りの経験をしたことがなくても、なお心のどこかで信じてしまう、不思議な魔力がありますよね。「二ノ丸くんが調査中」シリーズ(石川宏千花 作/うぐいす祥子 絵)は、そんな都市伝説の真偽を見極める調査をする小学生の男の子が主人公。背筋がぞくっとする話も入った連作短編集です。
その都市伝説はホンモノか? ニセモノか?
お調子者で人気者の小学生、今日太が最近もっぱら注目している同級生、二ノ丸くんは、孤高の人。話しかけても「迷惑だ」などとつっけんどんに返されるのですが、むしろそれが今日太の興味をさらにわかせ、今日太は二ノ丸くんにまとわりついてばかりいます。
友情や人とのつながりなどには全く興味のない二ノ丸くんですが、実は(あくまでクールに)情熱を傾けていることがひとつありました。それが、都市伝説の真偽を確かめる調査。本シリーズは、今日太の一方的なおしゃべりを少なからず情報源としながら、二ノ丸くんが調査した都市伝説と、それに関わる人のさまざまな運命を、連作短編で描きます。
ピックアップ! この都市伝説
⚫︎記憶をなくせるトンネル
【都市伝説の内容】わすれたい、と思っていることを頭に浮かべながら、目をつぶって後ろむきに歩くと、トンネルを抜けたときにはきれいさっぱり、その記憶をなくせる。
リナはあるなくしたい記憶をもってこの都市伝説を試し、見事成功します。後日、自身の日記帳を通じてそのことに気づいたリナは、再び、ある忘れたい出来事を胸にトンネルを訪れます。ところが、そこにいたのは二ノ丸くん。「その記憶は、消さないほうがいい」という忠告を受けるも、結局リナは従うことができず……(『二ノ丸くんが調査中』)
⚫︎透明人間の名札
【都市伝説の内容】今日太たちが通う小学校で、むかし1年生の子が行方不明となった。それ以来、永久欠番となったゲタ箱に、自分の名前を書いた名札をいれると、透明人間になってしまう。
友人のいないナオキは、かつていつも1人で行動していた二ノ丸くんを密かに仲間だと思っていましたが、今日太がまとわりつき始めてから、今日太のことが憎くてたまりません。ナオキはある日、ゲタ箱の都市伝説を使って彼と二ノ丸くんの仲をさこうとしますが、二ノ丸くんにとがめられ、自分が透明人間になる決意をします。(『二ノ丸くんが調査中 黒目だけの子ども』)
⚫︎脱出ゲームの館
【都市伝説の内容】廃業した総合病院の建物を再利用した「脱出ゲームの館」で、あることをすると中身がまったくの別人になって出てくる。
調査に訪れた二ノ丸くんは、3人の中学生に頼み、中の様子を動画で記録してきてもらうことに。ところが戻ってきたのは動画を撮影していた1人だけでした。動画を見返すと、彼だけが、あることをしなかったことに気づきます、(『二ノ丸くんが調査中 天狗さまのお弟子とり』)
小学校高学年からのソフトカバーレーベル「偕成社ノベルフリーク」のなかでも人気シリーズ! 都市伝説の闇に飲み込まれてしまう結末も度々登場する、本格ホラー連作短編集です。都市伝説に引き込まれる子たちの物語のなかには、ときに自分の胸に手を当てて「自分だったらどうするか」を考えさせられる場面もあるのではないでしょうか。
あくまで二ノ丸くんの調査については気づかない今日太のあっけらかんとした会話が、全体の雰囲気を明るい調子にとどめているのが、読みやすさのポイントです。しびれるホラー小説を読みたい方、ぜひお手に取ってみてくださいね。