新しい環境にとびこむと、どうしても肩ひじを張って、気づかぬうちに疲れがたまっているものです。そんな、がんばるあなたに読んでほしい1冊『ぼちぼちいこか』(マイク・セイラー 作/ロバート・グロスマン 絵/今江祥智 訳)をご紹介します。
いろいろな職業にチャレンジするカバくん! でも結果は……
主人公は、ずんぐりむっくり、のんびり顔のカバくん。ある日、カバくんはがぜんやる気を出し、将来の職業を探しはじめます。
「ぼく、しょうぼうしになれるやろか。」と、火事場に出動! すると……
はしごがカバくんの体重を支えきれず……「なれへんかったわ。」
「ふなのりは どうやろか。」とボートに乗り込むと……ボートがしずんで「どうも こうも あらへん。」
その後もカバくんは、パイロット、バレリーナ、ピアニスト……といろいろな職業にチャレンジします! が、そのずっしりとした体型ゆえ、どれもこれも失敗に終わってしまいます。
最後のページでは、ハンモックにゆられながら一言、「ま、ぼちぼちいこか––––ということや」。
大阪弁の翻訳が楽しい!
なんといってもおもしろいのは、アメリカの絵本が、コッテコテの大阪弁で翻訳されていること! 訳者の今江祥智さんはこのように話しています。
書斎の棚で毎日のように見かけては、「やあ!」とか「オハヨ」とか「お元気ですやろか?」などと呼びかけているうちに––––カバくんがどうやら、大阪育ちみたいな顔に見えてきてしまい––––いざ訳そうとすると、大阪弁でしか訳せませんでした。
(『英語でもよめるぼちぼちいこか』カバー袖の文章から)
一度読むと、ほかの言葉は考えられないほど、カバくんと大阪弁がしっくりくるのがふしぎ。大阪弁の陽気な雰囲気が、カバくんの性格と合っているのかもしれません。
ちなみに原書の本文では、“Can a hippopotamus be a〜?” “No!”のセリフが繰り返され、ページをめくるごとに”No!”の文字がどんどん大きくなるという、日本語版にはないおかしみが楽しめます。原文を楽しみたい方は『英語でもよめる ぼちぼちいこか』をどうぞ。
失敗しても落ちこまず、次つぎにあたらしいことにチャレンジするカバくん。そして、どれもこれもうまくいかなかったら、いったん休憩して「ぼちぼちいこか」と言ってくれるカバくん。「何かしなきゃ!」「ちゃんとしなきゃ!」と気がはっている心を、やさしくときほぐしてくれる1冊です。