あたらしく子どもが増えることになったとき、よろこびの一方で、少し心配になるのは、上の子のことでしょうか。赤ちゃんをかわいがってくれるかな、さびしい気持ちにさせちゃうかな。キーツの絵本『ピーターのいす』(エズラ・ジャック・キーツ 作/きじまはじめ 訳)は、妹を迎えたピーターのさびしさと、それを乗り越えてお兄ちゃんになっていくようすを絵本にした1冊。あたらしい家族を迎えたら、お子さんと読んでみませんか?
ぼくのものが次々に妹にとられている!
いつものように積み木で遊んでいた男の子、ピーター。
がしゃん! 積み木がくずれて大きな音をたてると、お母さんがいいました。
「しぃーっ」
「もっと、しずかに あそんでね。うちには、うまれたての あかちゃんが いるのよ。」
ふと見てみると、ピーターのものだったゆりかごや食堂椅子、ベッドなどが次々、妹のスージーのために色をぬりかえられています。不満げなピーターですが、一つだけ、ちっちゃいときに座っていた椅子にはまだ手がつけられていないことを発見します。ピーターはそれを持って、犬のウィリーと家出をすることにしました。
けれども、いざその椅子に座ろうとしてみると、なんと、小さすぎてもうピーターには座れないのです! そこでひと思案したピーター。家にもどって、お父さんと一緒にその椅子をスージーのためにぬりかえることにしました。お父さんにそう提案するピーターは、もうすっかりお兄ちゃんの顔です!
子どもによりそって
キーツの絵本の魅力は、シンプルな言葉と絵に、主人公の心の動きがみごとに表現されていることです。今まで当たり前にやっていたことでも、赤ちゃんの前では注意されることへの驚き、次々と自分のものが妹にとられていく切なさ、お母さんと仲直りするためにちょっとした遊びを思いつくいたずら心、などなど。
子どもらしさを体現するピーターという少年に、まるで友人のような親しい気持ちをもったり、自分を重ね合わせたりしながら読み進めることができるでしょう。
赤ちゃんに夢中のようにみえる両親が、ピーターのことももちろん愛情深く見守っているのがきちんと伝わってくるところも、見逃せません。
子どもをよく観察し、その心によりそうキーツのあたたかなまなざしを感じる1冊です。