チャイコフスキーのバレエ音楽として知られる「くるみ割り人形」。ホフマンの童話をもとにしたこの音楽は、クリスマスシーズンの定番でもありますね。今回ご紹介する『くるみわりにんぎょう』(ホフマン 作/山主敏子 文)は、『ぐるんぱのようちえん』(福音館書店刊)などで知られる画家の堀内誠一さんが、その世界を色鮮やかに描き出した絵本です。
『くるみわりにんぎょう』のストーリー
まずは、『くるみわりにんぎょう』の内容を、あらためてご紹介します。
クリスマスの夜、7歳の女の子マリーは、ツリーの下でくるみ割り人形を見つけます。それは、おじさまがくれた人形でした。マリーとお兄さんのフリッツは、人形の口でいくつかくるみを割りますが、フリッツが大きなくるみを入れると、人形のあごがこわれてしまいました。マリーは悲しみ、くるみ割り人形に包帯を巻いてあげて、ベッドに寝かせます。
その日の真夜中12時になったときのことです。マリーのもとにたくさんのねずみたちが現れて、マリーに襲いかかりました。「たすけてえ。」マリーの叫びに、戸棚の中の騒ぎだすと……ひとりの人形がおどりでました。あのくるみ割り人形です!
勇気あるくるみ割り人形に、戸棚にいた兵隊の人形たちがつづき、ねずみたちと戦いをくり広げます。マリーの機転で、なんとかみんなはことなきを得るのでした。
自分を救ってくれたマリーを、くるみ割り人形は、すてきなところへ招待します。その場所とは、お菓子の国! くるみ割り人形は、実はその国の王子さまだったのです
氷砂糖のまきば、金や銀のくだもの、レモネードの川……。夢のような空間を通ってマリーと王子さまがたどり着いたのは、お菓子のお城。そこであたたかく迎えられ、マリーは楽しい時間を過ごしますが、だんだん目の前がぼんやりしてきて……。
バレエの「くるみ割り人形」では、ねずみとの戦いの曲をはじめ、お菓子の国で妖精たちがおどる曲などもあります。「花のワルツ」など、たくさんの有名な楽曲がありますね。(※主人公の少女の名前は、クララとなっている場合もあります)
色鮮やか! 絵本ならではの夢のような世界
この絵本の絵を手がけているのは、画家の堀内誠一さん。夜の間におこるお話ですが、どのページも色鮮やかで、物語の世界に入り込めます。襲いかかってくるねずみたちの迫力、想像がふくらむお菓子の国の都……。バレエや音楽とはまた少しちがう視点から、このお話を楽しむことができます。
クリスマスの近づく冬の時期、ぜひ手にとってひらいてみてくださいね。