『モモ』『はてしない物語』など、長編ファンタジーで知られる、ドイツの作家ミヒャエル・エンデ。そのエンデが文章を書いた絵本があることを知っていますか? 夜、こわい夢をみてねむれなくなった子どもたちに贈る、愛情にみちた絵本『ゆめくい小人』(フックスフーバー 絵/さとうまりこ 訳)をご紹介します。
この国の人々にとって、いちばんだいじな仕事は「ぐっすり」ねむること
あるところに、まどろみ国という国がありました。この国の人々にとってだいじなのは、ねむること。それも長くねむるのではなく、ぐっすりねむること! 「よく」ねむれば、「きもちが やさしくなり、あたまは すっきりする」と考えられていました。
さて、この国の王様とお妃様にはひとりの娘がいました。その名も「すやすやひめ」! ところが、このお姫様は名前とはちがい、こわい夢をみるのがいやで、なにかとおやすみの時間を引きのばし、あまりよくねむれていませんでした。王様は、お医者や先生、羊飼いや薬草取りの女など、国中のいろんな人から話をききますが、これといった解決策はありません。
とうとう、王様みずからリュックを背負って、こわい夢を消す薬をさがす長い旅に出ました。そして、地球の裏側にやってきたころ……荒野でお腹をすかせた小人––––ゆめくい小人に出会います。娘のもとに小人をまねき、ある「呪文」をとなえれば、つののナイフとガラスのフォークで、こわい夢をすっかり食べてくれるといいますが……。
エンデが、ねむれない子どもたちに贈る絵本
『モモ』では時間に追われる人間をシニカルに描いたエンデですが、本書も忙しさゆえに削りがちなねむりを「いちばんだいじな仕事」と思う国の人々を主人公にした、エンデらしさを感じる1冊。
夢は、私たちにコントロールできない世界です。想像もできないようなたのしい体験をもたらすこともあれば、息もとまるような恐怖に出会うこともあります。こわい夢ときたら、大人でさえ、心臓をどきどきさせるのですから、小さな子どもたちにとってはいかにおそろしいものでしょう。
眠るまえのおともに、ぬいぐるみやお気に入りの枕などにくわえて、物語絵本というお守りはいかがですか? たのしい夢だけとっておいて、こわい夢だけ食べてくれる、ゆめくい小人。きっと子どもたちの強い味方になってくれます。夜、目をとじるのがちょっとこわい子に、やさしく寄りそう絵本です。