一緒に遊んだり、お手伝いをしたり。「ぼく」、オスカーは、おばあちゃんのことが世界一好き。でもおばあちゃんは、最近もの忘れをしたり、簡単なことができなくなったりしているみたい……。『おばあちゃん、ぼくに できること ある?』(ジェシカ・シェパード 作/おびかゆうこ 訳)は、大好きな家族が認知症になったとき、どんな気持ちでどう接するといいのか、子どもの目線から考えて理解を深める、あたたかな絵本です。
大好きなおばあちゃん。できないことが増え、施設に入ることに……
語り手である主人公の男の子・オスカーは、おばあちゃんのことが大好き。公園で遊んだり、一緒に本を読んだり、お花を育てたりと、楽しい時間を一緒に過ごしてきました。
でも最近おばあちゃんは、いろんなことを忘れてしまうみたい。なんでもないことがうまくできない日もあります。そんな時は、オスカーが手助けをします。
「ぼく、おてつだいするよ。ねえ おばあちゃん、ぼくに できること ある?」
そんなある日、おばあちゃんは、施設に入ることになり、引っ越しをしました。おばあちゃんのそばにいたいと思うオスカーに、パパは「お年寄りのための特別なおうち」があって、そこに住むのがおばあちゃんにとって一番いいと説明します。オスカーは少し緊張しながら、おばあちゃんのいる施設を訪れました。
新しいおうち、新しい環境。でもおばあちゃんのことが、ずっと大好き!
おばあちゃんの新しいおうちは、これまでとまったく違っていました。広くていろんな部屋があり、いろんな人がいます。お手伝いの人はやさしくて、おばあちゃんには新しい友だちもできていました。お友だちのアルバートさんは、車いすに乗ることもあります。
おばあちゃんはやっぱり、思い出せないことが増えていて、突然大きな声を出したり、オスカーが何度も聞いた昔の話をしたり、誰にも会いたくないと閉じこもってしまったりもします。悲しい気持ちになってしまうこともあるオスカーですが、そんなときは、家族やまわりの友だちに、ぎゅっとしてもらえば大丈夫。
介護施設で働いた経験のある著者が贈る、認知症への向き合いかたをやさしく案内してくれる一冊
このお話は、男の子オスカーの目線で描かれているので、「認知症」や「介護施設」といった言葉は出てきません。かわりに「できないことが増えたので、お手伝いをしてくれる人がいる新しいおうちへ行く」、というように、やさしい言葉を使うことで、認知症やその症状について、やわらかく子どもたちに伝えています。
また、作者のジェシカ・シェパードさんは、介護施設で働いた経験があり、施設の間取り図や施設での生活の描き方にも、その経験が生かされています。
巻末には、認知症についての解説も掲載されていて、家族で認知症について考えるきっかけにもなります。ぜひ、おじいちゃん、おばあちゃんに思いを寄せながら読んでみてくださいね。