作家・古田足日さん(1927〜2014)の代表作のひとつ、『大きい1年生と小さな2年生』(中山正美 絵/1970年刊)。小学生の心の成長をていねいに描いたこの作品は、毎年たくさんの子どもたちに読み継がれています。なぜ、こんなに長く愛されているのでしょうか。その魅力をご紹介します。
主人公、まさやとあきよ
まさやは、この4月に小学1年生になりました。とても背が高く、大人っぽいと思われがちですが、実は弱虫。通学路の林の道に泣きだしてしまうほどの、こわがりです。
あきよは、まさやと同じ小学校に通う2年生の女の子です。まさやと反対に、あきよはとても小柄。学年でも一番小さく、利発で強気な性格から、男の子たちから「チビのくせに!」なんて言葉を投げかけられることもありますが、それをものともしない強さをもっています。
そんなふたりは、帰り道が同じ。まさやは、しっかり者のあきよに手をつないでもらって、毎日林の道を帰っています。まさやはあきよに憧れ、あきよは弱虫のまさやを気にかけています。
あきよに憧れ、一歩を踏み出すまさや
原っぱで花を摘んだり、はじめての道を通って神社へ行ってみたり。まさやとあきよ、あきよの同級生・まり子は、あちこちで小さな冒険を繰りひろげます。小学生である3人の行動範囲は、それほど広くはありませんが、日々たくさんの発見をし、新しい感情が生まれます。
ひとりではこわくて行けなかった場所も、あきよとまり子が一緒なら、楽しい気持ちがまさって行動できるまさや。少しずつ、行ける場所、できることが増えてきたある時、3人で力を合わせてとったホタルブクロの花を、3年生の男の子たちに、めちゃめちゃにされてしまいます。
それまで涙などみせたことがなかったのに、つぶれてしまった花を前に涙をこぼしたあきよに、まさやは一歩踏み出すことを決意します。ホタルブクロの花を、両手いっぱいにとって、あきよにあげることにしたのです。
知らないことやはじめてのことは、できるだけ避けてきたまさやが、たったひとりで遠くの林を目指す……。さて、どうなるのでしょう?
ていねいに描かれる心の動きは、時代を問わず子どもたちに届く
この作品の大きな魅力は、子どもたちのていねいな描写です。こわがってしまったり、つい強がってしまったり、ちょっとしたことにドキドキしたり、ささやかな言葉に強く影響を受けたり。どの子をみても、誰しもに当てはまるような、子どもらしい面が満ちていて、大人が読んでも、「わかるわかる!」「こんな子、いたいた!」と共感できます。まさに同じ小学生時代を過ごす子どもたちには、その描写が、よりいっそう鮮やかに届くはずです。
『大きい1年生と小さな2年生』は海外でも、タイ、台湾、中国、韓国の4か国で出版されています。(2020年4月現在)特に中国では、なんと累計250万部突破世界の子どもたちの背中を、まさやとあきよは長年押しつづけているのです。
この春、新しい気持ちで、2人と一緒に踏み出してみませんか?